グリム童話「カエルの王様」(またはカエルの王子様)は、魔法でカエルになった王子が、王女により人間に戻り二人が幸せになる物語。
ディズニー映画の元の元ともなるお話ですが、グリム童話には結構ひどいと感じる内容も書かれてますね。
ここではカエルの王様について、あらすじを簡単に見つつ、どこがひどい内容なのか、またディズニー映画の違いも見ていきましょう。
カエルの王様:あらすじ
王女とカエルの出会い
昔々、まだ願いが良く叶う時代のこと。
お城に美しい王女様がいました。
お城の近くには大きな暗い森、そして、森の中には古い菩提樹とすぐ下には井戸があり、王女はその森で、お気に入りの金のボールを上に投げてはキャッチする、といった遊びが大好き。
ある日、上に投げたボールが王女の手に戻る代わりに井戸に落ち、水の中に沈んでしまいます。
井戸は深く、ボールをなくしたことで王女は大きな声で泣きました。
すると井戸の底からカエルが醜い頭を出して尋ねます。
カエル:
「王女様、どうしました?何で泣いてるの?」
王女:
「井戸に私のボールが落ちたから泣いてるの」
カエル:
「ではボールが取り戻せたら、何かくれる?」
王女:
「私の服や宝石、金の冠も挙げてもいいわ」
カエル:
「私は宝石も服もいりません。あなたが私を愛し、テーブルで一緒に横に座り、一緒のお皿から食事をし、一緒のカップから飲み、あなたのベッドで寝かせてくれたら、あなたのボールを取って来ましょう」
王女:
「ボールを持って来てくれるなら、望むことは何でもするから」
カエルは約束をすると井戸深く潜り、王女の金のボールを咥えて井戸の縁に投げました。王女は大喜びでそれを拾いお城に戻っていくではありませんか。
カエル:
「ちょ、待ってよ。私をあなたみたいには歩けないんだ...」
訪れたカエルと約束
カエルのことなどすっかり忘れてしまった王女。次の日、夕食のために着席すると、扉をノックする音が聞こえます。
開けてみると、
なんとそこには昨日のカエルがいるではないですか。
王女は恐ろしくなり、扉を閉めてすぐ席に戻りますが、その様子を見ていた王様が訪ねます。
「何があったのか。何を怯えているのか」
王女は昨日会ったことを王様に話すと、王様は王女に言います。
「そなたが約束したなら、それは守らないといけません。彼を中に入れなさい」
カエルは中に入り、王女の隣に座り、王女のお皿から一緒に食事をするのです。
カエル:
「疲れたから一緒にベッドに行って眠りましょう」
王女は泣き出しカエルを恐れ、ベッドで一人眠ろうとします。
これにも王様大激怒。「約束は守れ!」
カエルをつまみ上げ、
部屋の隅に寝かせると、カエルはベッドに這い上がってきます。
「あなたと一緒に眠りたい。さもないと王様に言いつけちゃうぞ!」
これには王女も怒り、
カエルをつかんだと思ったら壁に全力で投げつける!
魔法が解ける
投げつけられたカエルは死んでしまったと思えばそうではなく、床に落ちたかに見えたその時、そこには美しく優しい瞳の王子様がいました。
王子様は父の遺言で、
実は王女様の許嫁(いいなずけ)でもあったんです。
「ありがとう、王女様。
私は意地悪な魔法をかけられカエルになってました。私を井戸から救えるのはあなた様だけだったのです。」
次の日の朝、外には8頭の美しい白馬が引く華やかな馬車がやってきます。馬車には王子の忠実な従者も一緒です。
従者は王子が魔法でカエルに変えられた時、
悲しみで破裂しないよう、心臓に3本の鉄の帯を巻いてもらってました。
王子が馬車で王女を自分の王国へと進む時、
その鉄の帯は1つ、また1つと砕けます。
参考)カエルの王子様または鉄のヘンリー(WIKI:ドイツ語)
ひどい話1:壁にたたきつける
この「カエルの王様」のお話は、グリム童話の1つの物語で、原題は「カエルの王子または鉄のヘンリー(ハインリッヒ)」。
上で見たあらすじにあるように、
カエルがお城に来て王女と一緒に食事をし、
その後一緒にベッドで寝るシーンが結構ひどい、と思っちゃいますよね。^-^;)
王女と一緒のベッドで寝たい、ということで、ベッドに這い上がってきたカエルに恐怖した王女は、怒りのあまり、カエルを全力で壁に叩きつけます。
(王女様...気持ちは分かりますが、まぁそこはちょっと落ち着いて ^-^;))
でも壁にたたきつけられたカエルが床に落ちたと思ったら、魔法が解けて美しくも優しい瞳の王子に変わります。
なんでこうなる?という感じですが、
これは心理学などの側面からいろいろと解釈され(グリム兄弟がそれを意図したかどうかは別なんですが)、カエルは男性の象徴であり、少女である王女が異性への恐怖に打ち勝ち大人の女性に変ることを意味するとの解釈がありますね。
言われてみれば、なるほど...という感じもします。
ひどい話2:カエルに襲われる?
このグリム童話の「カエルの王様」、
日本語のWIKIの説明を見ると、ドキっとするような表現が使われて、あらすじが説明されてます。
カエルが王女様と一緒にベッドで眠りたい、というシーンですが、
「カエルは王女のベッドでの同衾(どうきん)を要求する」
なんて書かれてます。
これは男女関係、カエルが肉体的に王女をものにしたい、ということも意味しそうで、カエルを、より男性の象徴として意識した説明にもなると思います。
この説明を見ると、ひどい、というより、
すこし恐怖映画にも近い印象を受ける話にも見えそうです。
3日3晩やキスで魔法が解けるバージョン
王女がカエルを壁にたたきつける!という内容は、ドイツ国内では分かりませんが、英語に翻訳される過程などで、結構マイルドな形にも変化しているようです。
カエルを壁にたたきつけるのではなく「3日3晩ともにする」というストーリーでカエルの王様の話を記憶している人も多いかもしれませんが、あらすじ的には以下。
カエルとの出会いや、カエルがお城にやってくるのは同じですが、カエルは王女のベッドの枕元などで一緒に眠ります。
朝起きるとカエルはどこかに行ってしまい、王女はホッとするわけですが、次の日も、またその次の日もカエルはお城にやって来て、一緒に食事をし、一緒のベッドで夜を明かします。
でも4日目の朝、王女が目覚めると、ベッドのわきにはカエルではなく、ハンサムで美しい瞳を持つ王子が立っていた、というストーリー。
スリルとサスペンス感はなくなりますが、
子供向けとしてはマイルドで優しい感じになりますね。
また「王子のキスによってカエルの魔法が解ける」、というバージョンもあります。
英語に翻訳される過程の中で生まれたようですが、こうした話は、
- 「眠れる森の美女」(王子のキスで王女が目覚める)
- 「白雪姫」(王子のキスで白雪姫が目覚める)
- 「美女と野獣」(王女のキスにより野獣が王子に戻る)
などにも見られ、これらの物語の影響からか(またはその逆かもですが)、カエルの王様も「王女のキスで魔法が解ける」という形にしてるものもあるようです。
ディズニー映画との違い
ディズニーでは、この「カエルの王様」は2009年「プリンセスと魔法のキス」(The Princess and the Frog)でアニメ映画として描かれてます。
グリム童話の「カエルの王様」を元にした、というよりは、「カエルの王様」を元にしたパロディ「カエルになったお姫様」(The Frog Princess:2002年E.D.ベイカーによるもの)の物語があり、それを元にしてディズニーアニメが作られてます。
ということから、グリム童話の「カエルの王様」から、かなり話が変わってます。
元になったE.D.ベイカーの「カエルになったお姫様」のあらすじをちょっと見てみましょう。
<「カエルになったお姫様」のあらすじ>
美しい王女の「エマ」。
魔女の呪文によってカエルになったしまった王子「エドリック」に出会う。エドリックが「キスしてくれたら人間に戻れる!」というのでしぶしぶキスするとエマまでカエルになってしまう。
二人は魔法を解くための旅に出て様々な冒険をし、その中でエマは次第にエドリックに惹かれる。最後には魔法使いの叔母により二人とも人間に戻れ結ばれた。
「カエルの王様」を元にしているとはいえ、もうかなり内容が異なります。短いあらすじのみの紹介ですが、ディズニー映画と結構似た感じがしますよね。
そしてこの「カエルになったお姫様」を元にしたディズニーアニメが2009年の「プリンセスと魔法のキス」。
<「プリンセスと魔法のキス」のあらすじ>
自分のレストランを開くことを夢見る「ティアナ」。
悪い魔法使いによってカエルに変えられた「ナヴィーン王子」に出会う。ナヴィーンは「プリンセスとキスをすると人間に戻れる」と、ティアナを王女と間違えキスをせがむが、キスしたディアナまでカエルになってしまう。
二人は魔法を解くための旅に出て、最初こそ仲の悪かった二人も次第に惹かれあう。色々な経験をし、人間に戻るには「本当に必要なものは何か考えること」を知った二人。
カエルの姿のままジャングルで生きていくことを決め結婚式を挙げ、そこでキスした時に二人とも人間に戻るのだった。王子と結婚したディアナが王女(プリンセス)になったから。
このディズニーの「プリンセスと魔法のキス」では、ヒロインは王女ではなく、レストランを開く夢を持つ女性。
またディズニー映画初ともなる、アフリカ系アメリカ人が主人公(ティアナ)となったことでも話題になりました。
王子がティアナを王女と間違えてしまう、というところや、最後は結婚してキスすることで二人とも人間に戻るなど、元となる「カエルになったお姫様」とも結構違う内容になってますね。
大元の「カエルの王様」からすると、確かに王子が魔法によりカエルになっている、というのは同じにしても、その他は全然違うぐらいの内容になりそうです。
まとめ
- グリム童話「カエルの王様」は、魔法でカエルになった王子が、王女によって人間に戻り、二人は結ばれて幸せになる物語
- 物語の中では、王女が怒ってカエルを壁に叩きつけるシーンがあったりして、ひどい、と思われるかもしれないけど、これは少女が大人の女性になることを意味しているとの解釈がある
- 3日3晩過ごすだけ、また、キスで魔法が解ける、といったバージョンもある
- ディズニーでは「プリンセスと魔法のキス」で映画化され、ただ「カエルの王様」を元にしているというより、「カエルの王様」を元にした「カエルになったお姫様」が元になっている
カエルの王様の原作、グリム童話を読むと、ちょっと記憶と違ってたりして、ちょっとひどいかも、など思ってしまうシーンもありますね。
ただ、こうしたシーンもそうですし、物語に登場する、森、泉(井戸)、ボール、従者の心臓の鉄の帯など、物語全体としていろいろなジャンルの人の解釈があり、それだけ深い意味を持つ物語となっているかもしれません。
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