シンデレラの物語は古代からの伝承やグリム童話、ディズニーアニメで有名ですね。
原作は怖いお話しとも言われますが、
それはグリム童話のお話しで、ディズニーのシンデレラの原作かと言えば、ちょっと違うかも。
今回はシンデレラの物語について、古代から現代にいたる物語の変遷、や結婚後の義姉たちの悲惨な結末について見てみましょう。
シンデレラの物語の原作の変遷
シンデレラの物語について、原作は何か良く調べられると思いますが、多くはディズニー映画の原作は何か、というところになると思います。
ここではディズニー映画の原作に限らず、そもそもシンデレラの物語の原作は何か、その原作がどういった変遷をたどって今知るシンデレラの物語になったかを見てみます。
古代の物語「ロドピス」(紀元前1世紀)
シンデレラの物語の原型とも言われるお話は、なんと紀元前のエジプトまでさかのぼります。
古代エジプトで奴隷だった女性「ロドピス」(Rhodopis)が主人公。
ある日、ロドピスが川辺で入浴している時、鷹によって靴の片方が奪われる。この鷹がファラオ(王様のことね)の宮殿まで靴を運び、ファラオの前に落とすんですね。ファラオはこの不思議な出来事に驚き、靴の持ち主を見つけ出すことを決意し全国を探し回ることに。
最後にはロドピスを見つけ出し、その靴がぴったりと合うことを確認しますが、彼女の美しさとこの奇跡的な出来事に感動して、ロドピスを自分の妻に迎え入れた、というお話し。
鷹は当時ファラオの守護神ともされていたため、余計にファラオが神のお告げか何かかと、靴の主を探すことになったのでしょう。
この物語はシンデレラの大きな要素「不遇な環境の娘が最後には高貴な人と幸せになる」といったシンデレラストーリーが描かれてます。
特に「靴」が重要な役割を果たして特徴的なことが、今知るシンデレラの物語と共通していて、シンデレラの原型の物語とみなされる理由になるでしょう。
ちなみにこの物語には、悪い継母や魔法などは出てこないようです。
中国の物語「葉限」(9世紀頃)
続いては9世紀の中国の物語「葉限(叶限来)」。
主人公は部族の長の美しい娘「葉限」(ようげん)です。
葉限は若くして母を亡くしその後父親が再婚しますが、継母とその実の娘、つまり葉限の義理の姉によって虐待される日々を送るんですね。(義姉は一人)
そんな葉限には特別な友達(彼女だけに懐く魔法の魚)がいて、これが実は葉限の亡くなった母親の生まれ変わり。でもこの魚は継母と義理の姉によって殺されてしまいます。
魚の骨には不思議な魔法の力が宿っていて、その力で葉限は美しい衣装と金色の靴を手に入れ、地元の祭りに参加しますが、祭りで継母と義理の姉に見つかってしまい、逃げる際に葉限は靴の片方を失くします。でもこの靴が別の国の王の手に渡るんですね。
その金色の靴が不思議で、羽衣のように軽く、更に元々小さい靴だったのが、履こうとするとさらに縮んで誰も履くことができない。不思議に思った王は靴の持ち主を探し、ついに葉限の家にたどり着き、葉限がその持ち主であることをつきとめた。
王は不思議な魚の骨とともに葉限を自分の王国に連れ帰り、葉限は王様と結婚して幸せに暮らしましたとさ。
ちなみに、意地悪な継母と義理の姉は、最後には飛んできた岩によって命を落とします。
この物語では「靴」も出てきますが、「魔法の力を借りる」「継母」「義理の姉」と、今知るシンデレラの要素が登場します。また後のグリム童話で見られる「義姉の悲惨な結末」という要素も出てきますね。
ペロー「シンデレラ または ガラスの靴」(1697年)
続いては17世紀(1697年)、
ペローによる「シンデレラ または ガラスの靴」。
原題は「Cendrillon ou La petite Pantoufle de Verre」(サンドリヨンまたは小さなガラスの靴)ですが、この「Cendrillon」(サンドリヨン)が英訳によって「Cinderella」(シンデレラ)となったようです。
ディズニー映画との共通点が非常に多い作品で、物語の主人公「サンドリヨン」(シンデレラ)は父親が再婚した後、悪い継母と二人の義姉妹に意地悪を受ける日々。(家族設定も同じ)
家事をすべて任され、暖炉のそばで寝ることを余儀なくされ灰をかぶっていたため「シンデレラ」と呼ばれます。(「シンデレラ」は あだ名 なんですね)
ある日、王子が開催する舞踏会への招待状が届きますが、シンデレラは継母から「あなたはドレスがないでしょ」と参加を許されません。そこに妖精の女神が現れて、魔法を使ってシンデレラに美しいドレスを着せ、「ガラスの靴」を履かせ、「かぼちゃを美しい馬車に変えて」舞踏会へ行かせるんですね。
舞踏会ではシンデレラは王子と踊りますが「午前0時に魔法が解ける」ために急いで逃げ出し、片方のガラスの靴を落としてしまいます。王子はこの靴を手がかりにしてシンデレラを探し出し、靴がぴったりと合うことが確認された後、王子と結婚して幸せに暮らします。
また、シンデレラは王子との結婚式には継母と義姉妹を招待します。
ここがディズニーやグリム童話とは大きな違いにもなりますが、このシンデレラの優しさと寛大さに、継母と義姉妹も過去の行いを深く反省することにもなり、結婚式ではシンデレラに対して謝罪したりシンデレラの幸せを心から祝福するようにもなるんですね。
継母と義姉妹、シンデレラは和解し、それぞれが新たな人生を歩み始めます。
この17世紀のペローによる「シンデレラ または ガラスの靴」では、「シンデレラ」という名前、「ガラスの靴」「継母」「義姉2人」「妖精」「魔法」「かぼちゃの馬車」「夜中0時の時間制限」と、ディズニー映画に出て来る要素も非常に多く出てきます。
これにネズミの友達「ジャック」と「ガス」が出て来ると、ディズニー映画と基本同じ、というぐらいな感じで、ディズニー映画の原作とも言えそうです。
怖い話はグリム童話:姉たちの悲惨な最後
ディズニー映画の原作とも言われる、
17世紀のペローによる「シンデレラ または ガラスの靴」。
その後、19世紀(1812年)には、
こちらも今なお多くの人に親しまれるシンデレラの物語「灰かぶり」(Aschenputtel:アシェンプテル)がグリム兄弟から出版されます。
親しまれているシンデレラの物語では最も最近になることから、「これがディズニーのシンデレラにより近い内容になるかのか?」と言えば、全くそんなことはなく、ディズニーの原作とはちょっと言えない内容かも。
それもそのはずで、グリム兄弟は別にペローの「シンデレラ または ガラスの靴」をベースにしているわけではなく、様々な民話や伝承を元に創作しているので、異なる箇所が多いのも当然と言えば当然にはなりますね。
シンデレラの原作が「本当は怖い話」と言われるのがこのグリム童話の「灰かぶり」になりますが、大枠の話の流れは同じにしても、細部がかなり異なります。
物語の始まり
この「灰かぶり」の物語では、裕福な紳士を父に持ち、その妻(母)が亡くなり、父は2人の娘を持つ女性と再婚します。継母や義姉たちは外見は美しいですが心は残酷でとても意地悪。
シンデレラは日々意地悪をされるし、暖炉のそばで寝ることを余儀なくされ、灰まみれになってることから「Aschenputtel」(アシェンプテル:灰かぶり)というあだ名で呼ばれます。(Aschenputtelを英語に訳すとCinderella(シンデレラ)になる)
そうした辛い日々にも耐えながら、シンデレラは毎日、亡き母の墓を訪れ、祈りを捧げます。
父からもらった小枝を差すと、それが大きな木に成長し、その木にお祈りをすると、白い鳥がシンデレラの望むものを与えてくれるようになるんですね。
(妖精とか魔法使いのおばあさんは出てこない。勿論ネズミたちも登場せず)
王子の舞踏会
ある時、王が王子の花嫁候補を探すために3日間の舞踏会を開きます。いつも辛い日々を送ってるシンデレラも行きたい!(女の子ですからね)と継母に願いますが、「あなたはドレスを持ってないよね」ということで許しません。
そこでシンデレラは母が眠る場所にある願いの木にお祈りします。すると白い鳥が美しいドレスと靴、馬車を与え(馬車はバージョンによっては出てこない)、いざ舞踏会に。
※)このグリム童話のシンデレラでは「願いの木」と「白い鳥」が大活躍
訪れた舞踏会では、王子は美しいシンデレラに魅了され、彼女とのみ踊ります。
シンデレラの逃亡と王子の執念
王子の舞踏会は3日間続きます。
いつも王子と踊るシンデレラですが、
それでも自分の正体を隠すため毎晩王子から逃げることに。
(魔法が効れる、とか、夜中の0時が期限、とかは出てこない)
でもシンデレラに心を奪われ自分につなぎ留めたい王子は、3日目の夜には階段にピッチ(ヤニ:ネバネバして手にくっつくようなもの)を塗りまくった。(王子、やりますな(笑))
その結果、シンデレラは3日目の夜、その階段に「黄金の靴」(ガラスの靴ではないのだ)の片方を残してしまうことになります。
王子はその靴を手に取り、靴が合う女性を国中探し求めます。
真実の暴露
ここからが「原作は怖い」と言われるシーンが登場します。ディズニーやその原作とされるペロー版にはない内容ですね。
ついにシンデレラの家まで来た王子。
王子が来た、私がその女性よ、と継姉たちは無理やり靴を履こうとしますが、靴が小さすぎてサイズが合わない。
そこで継母は長女の義姉に小刀を渡し「爪先を切ってしまえばいい」と言うんですね。(怖い...)
王子は王子で、義姉の足が靴に入ったので城に連れ帰ろうとしますが、白い鳥が「血が出てるよ」と王子に教えて「あんた、ちがうやん」と次の義姉に靴を履かせます。(いや、顔見ればわかるでしょうに)
次の義姉もサイズが合わず、そこで継母、まとも小刀を渡し「かかとを切ってしまえばいい」と伝えます。どんな継母、義姉なの、とも思いますが、でもまたまた王子は信じて義姉を城に連れ帰ろうとします。でもそこは白い鳥が同様に血が出ていることを指摘するんですね。
そして最後に残ったシンデレラ。シンデレラの足がその靴にぴったりフィット。そして改めて顔を見ると舞踏会で踊ったあの美しい女性であることを確信し、お城に連れ帰ります。
結婚と姉たちの悲惨な末路
これ以降はグリム童話でも後に追加された内容になりますが、王子、そして王妃となるシンデレラは結婚することに。
白い鳥と義姉たち
義姉たちは王妃となるシンデレラに取り入れられようと花嫁に付き添うわけですが、そこに白い鳥が参上し、義姉たちの片目をつついて失明させ飛び去ります。
大騒ぎになったことは想像できそうですが、更に小鳥たちが戻ってきて義姉たちの残りの目もつつき、義姉たちは生涯目が見えなくってしまうんですね。
なにか壮絶な結婚式となったのが想像できそうですが、幸せになったシンデレラ、悲劇が訪れた義姉たち、という結末です。
(上の方で見た9世紀の中国の物語も、最後は継母、義姉が、飛んできた岩によって命を落としまいますが、その影響を受けてそうです)
シンデレラと白い鳥
白い鳥たちは、シンデレラが願いの木に祈りをささげると、望むものを与えてくれます。
物語の中では、シンデレラの願いをかなえるために、力を貸してくれる強い味方になりますが、最後には義姉たちに罰を与えるように目をつぶしてしまいます。
仮にこの白い鳥たちがシンデレラの望みをかなえるものたち、としたら、最後の結末はシンデレラが実は心の奥底で望んでいたのかもしれない、なんて想像も出来たりして、グリム童話のシンデレラはかなり怖いお話にも映りそうですね...
シンデレラの結婚後を描いた作品は?
王子と結婚して王妃となったシンデレラ。
結婚後を描いた作品は有名な物語は特にないようで、近代ではディズニーなどにありますね。
ディズニーでは「シンデレラ II」(Cinderella II: Dreams Come True)、2002年のディズニー作品。
ディズニーのシンデレラでは、ねずみの友達「ジャック」と「ガス」が登場しますが、このシンデレラIIでは、そのジャックやガスが結婚後の3つのエピソードをまとめたもの。
シンデレラが王宮の古いしきたりなどに奮闘するお話や、ねずみのジャックが退屈して魔法で人間になる話、またシンデレラが義姉の恋愛を応援するお話があるようです。
またその後2007年には「シンデレラIII 戻された時計の針」(Cinderella III: A Twist in Time)もあり、こちらがシンデレラの結婚後を描いた作品、ということになりそうですが、魔法の杖により、継母が時間を戻し、シンデレラの結婚前の「王子がシンデレラのガラスの靴を履かせて確かめる前」まで戻し、ガラスの靴のサイズも自分の子供(義姉のアナスタシア)の足に合わせます。
王子と自分の娘を結婚させようとたくらむお話し。
シンデレラに興味がある場合には、
このディズニーの「シンデレラIII」をチェックするのも良いですね!
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