カワイイ赤ずきんがおばあさんとともに狼に食べられてしまうお話し。
ここではグリム童話のあらすじを短く見て、その教訓や原作の怖い結末、狼の正体をまとめてみてみましょう。
赤ずきん(グリム童話)のあらすじを短く
お母さんとの約束
昔あるところに「赤ずきん」と呼ばれる可愛い女の子がいました。
大好きなお婆さんからもらった赤い帽子をいつも被ってたから、そう呼ばれてたんですね。
ある日、病気のおばあさんのために、森の中にあるおばあさんの家に行くことになりました。
「森の中の道を外れてはダメよ!」とお母さん。
赤ずきんちゃんは「わかったわ!」と約束し、いざおばあさんの家へ出発!
悪い狼との出会い
途中、悪い狼に出会います。
うまそうな子供だ...
「赤ずきんちゃん、どこ行くの?」
「病気のおばあさんのところにお見舞にいくの」
(おばあさんもいるのか。二人まとめて食べてしまおう。ウッシッシ)
「それなら花束を持っていくと喜ぶと思うよ」
「そうね!花を摘んでから行きましょう」
赤ずきんはお母さんと約束したにもかかわらず、道を外れて森の奥へと入っていきました。
やった!とばかり、
狼は先にお婆さんの家に行き、お婆さんを食べてしまいます。
赤ずきんが食べられる!
狼は赤ずきんちゃんを待ち伏せするために、おばあさんの服を着て帽子もかぶり、急いでベッドにもぐり込みます。
そこに訪ねてきた赤ずきんちゃん。
赤ずきんちゃんが寝ているベッドのところに行くと、おばあさんが何か変。
「おばあちゃん、なんで大きな耳なの!?」
「あなたの声をよく聞くためよ」
「おばあちゃん、なんで目が大きいの!?」
「あなたのことが良く見えるようによ」
「おばあちゃん、なんで大きな手なの!?」
「あなたをしっかり捕まえられるようにだよ」
「おばあちゃん、大きなお口!」
「お前を食べるためさ!」
そう言うやいなや、
狼はお赤ずきんちゃんと食べてしまいました。
猟師が機転を利かす
お腹いっぱいになった狼は、
そのままベッドで大きないびきをかきながら寝てしまいます。
丁度その時、近くを通りかかった猟師が、
「なんて大きないびきなんだ」
と不思議に思っておばあさんの家をのぞき込むと、そこには長い間追いかけていた狼が寝ているではありませんか。
「おばあさんは食べられてしまったんだな。
まだ助かるかもしれない。撃たずにお腹を切ってみよう。」
猟師がチョキチョキと狼のお腹を切ると、赤ずきんちゃんが飛び出します。
「お腹の中、暗くて怖かった~」
更に狼のお腹を切ると、
おばあさんも出てきます。
二人とも無事だったんですね。
赤ずきんちゃんは、
重くて大きな石を持って来て、
それを狼のお腹に詰めました。
狼も目覚まし「これはまずい!」と逃げようとすると、お腹が重くて倒れて死んでしまいます。
3人はとても喜び、
猟師は狼の毛皮を取り、
おばあさんはケートを食べワインを楽しみました。
「お母さんがダメといったら、
決して道から外れてどこかに行ってはいけないんだわ」
約束を守った赤ずきん
それから何日か経った後、
赤ずきんちゃんはおばあさんのところに焼き菓子を持ってくことになりました。
行く途中に、今度は別の狼が現れ、
やはり赤ずきんちゃんを森の道を外れて森の奥に行くようにしむけます。
でも今度はお母さんとの約束通り、
赤ずきんはまっすぐおばあさんの家を訪れるんですね。
「おばあちゃん、また狼に会ったよ。また前のように森の奥に行ったら食べられちゃったかも」
するとその狼がやってきた。
「おばあちゃん、開けて。赤ずきんよ」
なんてドアの外で言うんですね。
ドアが開かないと悟った狼は、
屋根に上り、赤ずきんが夕方帰るのを待ち、
暗闇の中で食べちゃおうと思ったんです。
狼の悪だくみを察したおばあさん、
赤ずきんちゃんにこう言います。
「昨日ソーセージを茹でたの。
その水があるから、バケツにくんで外の石の桶まで運びなさい」
大きな石の桶にソーセージを茹でた水がたまり、とても良い匂いが立ち上ります。
お腹を空かした狼は、
その匂いにつられ大きく首を伸ばしますが、
あまりに首を下に伸ばしたために滑って屋根から落ちてしまいます。
狼は水のたっぷり入った大きな石の桶に落ち、
おぼれて死んでしまいました。
赤ずきんちゃんは、無事家に帰りましたとさ。
物語の解釈と教訓
このグリム童話の「赤ずきんちゃん」は、
大体今よく知られる話と同じですね。
少女がおばあさんの家を訪ねる途中の森で出会った狼にだまされ、狼は少女とおばあさんを飲み込んでしまいますが、猟師によって助けられます。
ここから、赤ずきんちゃんの物語の解釈と教訓は以下のようになるでしょう。
- 見知らぬ人の情報には要注意:
赤ずきんは、狼に騙されてしまいます。
このことは、子供たちに対し、知らない人や危険に対して警戒するよう教えているとも解釈されますし、逆に知らない人に無暗に情報を与える危険性も伝えているようです。 - 大人の指示には従うこと:
赤ずきんは母との約束を守らず寄り道をしたために狼に食べられてしまう結果へとつながっています。
約束の大切さ、大人の指示には従うことの大切さを示しているようですね。
こうしたことが、この赤ずきんの物語の教訓と言えそうです。
原作の結末は?
今知る赤ずきんちゃんの物語は、
狼に食べられた赤ずきんちゃんとおばあさんが最後は猟師に助けられて、めでたし、めでたし、といった内容。
原作の結末はどうなっているか、
という点では、
1つは上で見たグリム童話の赤ずきんちゃん。
このグリム童話では、結末は以下になりますね。
<グリム童話での結末>
- 狼に食べられたおばあさんと赤ずきんちゃんが猟師に助けられる。狼はお腹に重い石を詰められ、目覚めた後、その重さで倒れて死んでしまう
- 更に別の日におばあさんを訪れた赤ずきん。またもや狼が来て、今度はソーセージを茹でた水でおびき寄せ、狼は屋根から落ちておぼれて死んでしまう
グリム童話では、おばあさんと赤ずきんちゃんは2度狼に襲われます。
一度目は赤ずきんちゃんがお母さんとの約束を守れず、結果狼に食べられはしたものの猟師に助けられ、でも2度目は約束を守り、見事自分たちで撃退する、という結末。
また「原作」という点では、
グリム童話より100年前のシャルル・ペローによる「赤ずきんちゃん」がよく知られてます。
このペロー版の赤ずきんちゃんの結末は以下。
<ペロー版での結末>
- 狼はおばあさんを食べた後、今知る物語やグリム童話版と同じように、赤ずきんちゃんも狼に食べられた
以上で終わり ^-^;)
なんとペロー版では「狼が赤ずきんちゃんをむさぼり食った」という文が結末となり、その文で実際に終わってます。
つまり今よく知られている
「猟師が狼のお腹を切って助けた」というのはグリム童話からなんですね。
なぜペロー版でこんな終わり方になっているのか、というのは、ペルー版を読むと分かりますし、その中で「狼の正体」も分かります。
狼の正体とペロー版
狼の正体は、多分男性だろうな、と感じますが、原作の原作とも見れるこのペロー版での赤ずきんの流れを見てみると、以下のようになってます。
あらずじ風に簡単に追いかけみると...
- 赤ずきんは村の中で最も美しい少女
- おばあさんのところに持って行ったのはケーキとバターの入ったポット
- 途中狼に出会うが、狼は怖いものとは知らず、
「おばあさんの家にどちらが先に着くか競争しよう!」と言う提案に乗ってしまう。 - 狼は近道を、赤ずきんは時間のかかる道を行った。
(狼に騙されたことになる) - 狼は3日も食べておらず、お腹がぺこぺこ。おばあさんをむさぼり食う
- 赤ずきんは、おばあさんに化けた狼と以下の会話をする
「おばあさん、なんて大きな腕なの」
⇒ あなたをしっかり抱きしめるためよ。
「おばあさん、なんて大きな足なの」
⇒あなたと一緒に走るためよ
「おばあさん、なんて大きな耳なの」
⇒あなたの声が良く聞こえるためよ
「おばあさん、なんて大きな目なの」
⇒あなたをよく見るためよ
「おばあさん、なんて大きな歯なの」
⇒あなたを食べるためよ - この会話の後、狼は赤ずきんを食べてしまう
赤ずきんは、最後はおばあさんの「口」ではなく「歯」について話してますね。
ペロー版では、狼の特徴がより強調され、
最後には赤ずきんは食べられてしまい、見方によっては残酷な形で終わってます。
そしてペロー版には
最後に「Moral」(教訓)として以下も書かれてます。
子供たち、特に若い女の子は、
見知らぬ人に対して簡単に耳を傾けるべきではない。
狼には非常に魅力的で、穏やかで、怒りっぽくなく、家や更には部屋まで追いかけて来るものもいるが、見た目優しかったり穏やかな、一見おとなしそうな狼が最も危険である。
ここでいう狼は、勿論男性になり、
つまりは外見や表面的な魅力に惑わされず、より深く人物を見極めるように、ということを言ってるようです。
そう、狼の正体は男性です。
その中でも特に、見た目優しそうだったり穏やかなように見える「良い男性」。
ペローがこの赤ずきんを書いたのは17世紀のフランスです。
ルイ14世の絶対王政の元、貴族や宮廷文化が隆盛を極め、女性は男性の所有物として扱われ、社会的権利をほとんど持っていなかった時代。
当然のように、
恋愛や結婚でも男性優位であり、
女性が自分の意思や感情を表現することは難しい時代でもあったようです。
こうした時代背景の中、ペローがこの「赤ずきん」を書いたわけですが、そうした時代の中の女性に対し、
「若い女性たちよ、簡単に信じるな。よく見るのだ。」
「怒りっぽかったり、マナーをわきまえてない男性は見れば分かるので避けようもあるが、そうではない「良い人を装っている男性」の中にこそ、狼がいるのだ。」
そうした警告でもあり、
逆に当時の女性が男性に騙されることが多かったことを反映しているとも言えそうです。
だから余計にペロー版では、狼と赤ずきんの会話に見られるように狼の特徴(狼の怖い特徴)が物語の中で詳しく書かれ、最後は赤ずきんは食べられて終わり、といった可哀想であり残酷にも見える結末にして、よりメッセージを強烈にしている、となりそうですね。
なぜ狼はすぐ赤ずきんを食べなかったのか
この赤ずきんの物語の素朴な疑問。
狼は森で赤ずきんと出会いますが、
先におばあさんの家に行って、おばあさんを食べた後に赤ずきんを食べますよね。
森で出会った時にまず赤ずきんを食べちゃえばいいのに、どうして後からなのかな、という疑問がずっとありましたが、ペロー版にはその理由が直接的に書かれてます。
「狼は赤ずきんをその場で食べたかったが、森には木こりがいたので、あえてそうしなかった」
狼は森の中では人目を気にした、ってことですね。
またこうしたことから改めてグリム版を読むと、グリム版では狼が大きないびきを立てて寝ているシーンで「猟師はその狼を長い間追っかけていた」という説明がされてます。
つまりグリム版でもこの説明から、狼は猟師に追われている身であり、森で赤ずきんちゃんを食べて時間をそこで使うと、猟師に見つかるかも、と考えたかもしれません。
これでやっと長年の謎が解けました(笑)
赤ずきんの本名は?
最後にもう1つの素朴な疑問。
赤ずきんちゃんには本名があるのか?について。
原作とも言われる、ペロー版、グリム版では、赤ずきんちゃんの名前は「Little Red Riding Hood」(赤ずきん)というニックネームで呼ばれ、本当の名前は出てきません。
赤ずきんの名前が登場するバージョンもあるようで、研究者によると、ペロー以前の14世紀にさかのぼる初期のバージョンでは、「Briar Rose」(ブライアー・ローズ)とか「Briar Rabbit」(ブライアー・ラビット)となっていたようです。
参考)
What Was Little Red Riding Hoods Real Name(英語)
これら元々の名前から「赤ずきんちゃん」となったのは、子供には「Briar Rose」とか「Briar Rabbit」の発音が難しかったとか、物語をより子供向けにするために変えた、などの説があるようですね。
また、逆によりあたらいい19世紀のバージョン「赤ずきんの真実の歴史」(The True History of Little Goldenhood:1888年)では、赤ずきんの本当の名前として「Blanchette」(ブランシェット)としてたりします。(どうやらペロー版のパロディ版みたい)
他にも後の版で「メイジー」(Maisie / Maisy)と名前が付けられた作品もあるようです。
ただ英語で検索してもほぼ情報がない(一部この名前を使った創作ものがあるだけ)なので、何か都市伝説のように日本で「メイジー」説が広まっている、という感じにもなりそうです。
< 赤ずきんの本当の名前 >
- 「Briar Rose」(ブライアー・ローズ)
- 「Briar Rabbit」(ブライアー・ラビット)
- 「Blanchette」(ブランシェット)
- 「Maisie / Maisy」(メイジー)
これらは14世紀といった古い時代にその名であったり、グリム童話以降の創作でつけられた名前、ということになりそうですね。
まとめ
- 赤ずきんの物語は、グリム童話では2回狼に襲われる。一度目は今知られる内容で、2度目はおばあさんと協力して狼をやっつける
- 原作の結末としては、グリム童話では今知られる内容と大体同じ。それ以前のペルー版では、なんと赤ずきんが狼に食べられ、そこで終わってしまう。
- ペルー版では、最後に教訓が書かれ、若い情勢に対し、見た目の良い男性には特に気を付けることが教訓として書かれている
- 狼の正体は男性。それも見た目、魅力的であったり優しい男性を指す
赤ずきんの物語、ペロー版原作では、その後のグリム版では省略された描写もありますね。
特に赤ずきんがおばあさんを訪ねた時、
おばあさんに化けた狼は赤ずきんをベッドに誘い、赤ずきんも服を脱いでベッドに行くシーンもあったりします。
こうしたシーンも、若い女性たちに対する、軽々しく信じて行動するな、という警告の意味が込められているように見えますね。
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