【ラプンツェル】あらすじを簡単に!なぜ原作は怖い,性描写ありと言われるのか

ラプンツェルの物語、原作が怖い、性描写がある、といわれてます

ディズニーでも映画でも有名になった『ラプンツェル』はグリム童話を原作にしたもの。

さらに原作をさかのぼると、17世紀フランスの「ペルシネット」、イタリアの「ペトロシネッラ」となりますが、はたしてこれらの原作に怖い箇所や性描写もあるのでしょうか。

ここではグリム童話のあらすじや更に原作をさかのぼり、どこが怖いのか、性描写の噂も見ていきましょう

ラプンツェル(グリム童話):あらすじ

グリム童話では、
子どもを心から望む夫婦の話から始まります。

どこが怖いのか、
性的に刺激的な個所があるのか、あらすじを見ていきましょう。

ラプンツェルの誕生秘話

待望の子が妻のお腹に宿りますが、
妻はやがて顔色も悪くなり今にも死にそうな感じです。

「私もうダメ。ラプンツェルを食べないと死んじゃう!」

妻は隣の家に見える美しい「ラプンツェル」(野菜の一種)を欲しがりますが、でもそこは世界中から恐れられる魔女「ゴーテル」の家の庭

意を決した夫は妻のために
魔女の庭からラプンツェルを盗み出しますが、魔女に見つかってしまいます。

「よくもまぁ、そんなことができるもんだね!!」

「なに?妻が死にそうだと?
分かった。好きなだけラプンツェルを持っていくがいい。ただし、生まれてきた子供は私のものだ」

夫婦にはやがて女の子が生まれ、約束通り魔女が連れ去ります。

ラプンツェルの成長と孤独

女の子は「ラプンツェル」と名付けられ、
金色の長い髪を持つ美しい少女へと成長します。

ラプンツェルが12歳になった時、
魔女は「この美しい少女は自分だけのものだ」とばかり、森の中の高い塔の上に閉じ込めてしまいます。

塔の上の部屋には窓があるだけ。

ドアも階段もなく、
ラプンツェルはそこで一人過ごすのです。
できるのは歌を歌うことぐらい。

魔女がラプンツェルに会い来るときは、
いつも塔の下でこう叫ぶのでした。

ラプンツェル、ラプンツェル、
お前の髪をおろしておくれ

グリム童話「ラプンツェル」より(ルイス・リードによるもの)

その声を聞くと、
ラプンツェルはその美しい金色の髪を下までおろし、魔女はその髪をよじ登るのでした。

王子の登場と恋の始まり

ある時、王子が森を通りかかり、
塔の上から聞こえる美しい歌声に気が付きます。

「なんて綺麗な歌声なのだろう...」

王子はなんとかその子に会いたいと、
塔の入り口や階段を探しますが、どこにもそんなものはない。

王子はその声が忘れられず、何日も塔に通い、魔女がどうやって塔に上るかを知ります。

「なるほど、ああやって塔の上に上るんだな」

王子はあたりが暗くなった時、魔女と同じようにラプンツェルに向かって叫びます。

ラプンツェル、ラプンツェル、
お前の髪をおろしておくれ

王子は美しい髪を上っていき、
ついに王子とラプンツェルは出会ったんですね。

最初こそ目の前に突然現れた男性に恐れを抱いたラプンツェル。でもハンサムな王子の話を聞いている内に心も安らぎます。

「私の妻になって一緒に逃げて欲しい!」

ラプンツェルは「王子は魔女よりも私を愛してくれるだろう」と思い受け入れますが、どうやって塔を下りればよいのかが分かりません。

(王子も魔女も、ラプンツェルの長い髪をつたって上り下りしてますから、ラプンツェル自身はそれができない)

「そうだ!毎日絹を持って来て下さい。
私がそれではしごを編めば下に降りられます」

それから毎日王子は絹をラプンツェルの元へ届けます。

魔女はこのことに気が付きませんが、
はしごを編みあげ逃げる準備が出来た時、ついにラプンツェルが魔女に告げるのです。

あなたは引き上げるのに王子に比べて凄く重いの。
もうすぐその王子が来るわ!

なんてことを言うのだと怒りまくる魔女は、
ラプンツェルの美しい髪を切り刻み、
ラプンツェルを砂漠へと追放してしまいます。

その後やってきた王子。

「あははは。もうラプンツェルはいないよ。お前は二度とラプンツェルには会えないのさ」

魔女は王子を嘲り笑い、
猫が王子の目をひっかきまくる。

王子は痛み苦しみ、
絶望のあまり塔の上から飛び降りると、
トゲが目に刺さり失明してしまうのでした。

裏切りと再会

ラプンツェルを失い目も見えなくなった王子。

でも王子はその後、
草木の根、木の実を食べながら森の中を数年もさまよい、ラプンツェルを探します。

ラプンツェルは砂漠で自分が生んだ双子の子供と悲惨な暮らしをしてました

そこについにたどり着いた王子。
聞き覚えのある声を耳にします。

あの声は...まさか!

王子はその声に向かって近づき、
ラプンツェルもまた近寄ってくる王子を見つけ、王子を抱きしめて泣きました。

やっと会えたのですね...

ラプンツェルの涙は王子の目を濡らし、そこで奇跡が起きます。

王子の目が再び見えるようになったんですね。

王子はラプンツェルを自分の王国へと連れていき、幸せに暮らしましたとさ。

どこが怖い?性的描写は?

このグリム童話では、怖いと言われるとしたら、それはあくまでディズニーアニメに比べて、ということになると思います。

魔女がラプンツェルを砂漠に追放して悲惨な状況に置かれたり、王子が塔の上から下に落ち、目にとげが刺さって盲目の身になってしまう、というところが、怖い、と言われる個所になるのでしょう。

(グリム童話には詳しい描写がないのでそれほど怖いか?という感じもしますが)

また最後にラプンツェルの子供として双子が登場しますが、特に子供が生まれた経緯もなんとなく読み取れるぐらいで、刺激が強い、というものでもないようです。

グリム童話では、そうした所は配慮され、
原作から関連する表現は削除されたようですね。

グリム童話の原作のあらすじ

グリム童話では、最後にいきなり
「ラプンツェルは自分が生んだ双子と暮らしている」となってます。

王子がその父親だろうとは容易に想像がつきますが、このグリム童話の原作となるの「フランスのおとぎ話『ペルシネット』(Persinette:1698年)」

※)著作はフランス人作家の「ド・ラ・フォルス」(Charlotte-Rose de Caumont de La Force))

この原作に、怖いなどの要素はどこにあるのかも見ていきましょう。

原作:ペルシネットのあらすじ

グリム童話との違いをあらすじ風に見ていくと、ざっと以下の通り。

  • 夫婦の家の隣は魔女ではなく妖精の家
  • 妻が欲しがったのは、その地域では妖精の庭にしかなかったパセリ
  • 妖精が子供を連れ去る時、魔法の水をふりかけ美しい赤ちゃんにして、ペルシネットと名付けた
  • 12歳になるとペルシネットは塔に閉じ込められるが、美しく豪華な部屋。食事含めて何でもそろっていて、(そもそも妖精しか知らなかったので)ベルシネットは孤独を知らず、読書や絵、楽器や歌など不自由なく楽しみながら過ごす
  • 王子がやってきた時、ペルシネットは何が何だか分からず混乱し、王子の言われるがままその場で結婚の儀式を行ってしまう。
  • 毎日王子は会いにくる中で、ペルシネットも徐々に王子を愛するようになり、ペルシネットは子を身に宿す(大人向けのような細かい描写はない)
  • ペルシネットは自分の体に何が起きたのか分からず困惑し、でも妖精が気が付く
  • 激怒した妖精はペルシネットを海辺の小屋へ置き去りにする
  • 王子は絶望のあまり塔の上から外に飛び出し視力を失う
  • ペルシネットが置き去りにされた海辺の小屋は穏やかな場所にあり、あたたかなベッドに、尽きることなく湧き出る美味しいビスケットの箱があった(過ごすには良い環境であり、寝る場所や食べることには全く困らない)
  • ここでペルシネットは男の子、女の子の双子を出産し、時を過ごすことになる。
    (父親は勿論王子)
  • 数年さまよった王子は遂に海辺に到達し、ペルシネットの涙が王子の目を癒し王子はまた光を取り戻した
  • 喜びの再会もつかの間、ビスケットを食べようとすると石に変わり、水は水晶に変って飲めない。草を蛇や獣に変わり鳥たちもドラゴンに変る。そこにあるのは恐怖だけ。
  • 水も食料もなく、腕の中には衰弱した子供達。愛を貫き王子もペルシネットもついに死ぬ覚悟を決める。
  • この愛を貫いた二人の覚悟を感じた妖精、かつて自分がいかにペルシネットを愛していたのかを思い出し、彼らの前にあらわ彼らを許す
  • 妖精は宝石で輝く美しい馬車を出し、皆を王子の国の宮殿まで導き、ペルシネットと王子、その子供たちは、幸せに暮らした

原文の参考:
Persinette – Wiki(フランス)

グリム童話に比べると、ペルシネット(ラプンツェル)と王子が愛し合い、その過程で身ごもったことがはっきり分かる描写があり、そこを現代から見て性描写と少し大げさにとらえている感じもします。

どこが怖いの?大人向けの描写は?

この原作にも王子が失明してしまうシーンもあることから、怖い、というのはここを指しそうですね。

(失明する箇所に何か凄い細かい描写があるかと言えば、それはない)

この物語の中では、
グリム童話から比べてみると、妖精のペルシネットに対する扱いがかなり異なり、凄く優しい面も出ています。

塔に閉じ込められたペルシネット。

でも部屋には綺麗な衣装、美味しい食事など生活に必要なものがすべてそろい、そもそも生まれた時から妖精と二人ぐらしのようで、ペルシネットは塔で一人で過ごしていても何かそれを当たり前のこととして「孤独を知らずにそこの生活を楽しんだ」という描写がされてます。

子供を宿したときも、ペルシネットは自分の体の異変に戸惑い、また王子も何が起きているのか恐れてペルシネットに説明しなかった、という、王子の頼りなさや無責任さも描かれてますね。
(まだまだ未熟な二人だった、ということがここでは言いたかったのでしょう。特に大人向けの描写もない)

妖精も冷徹な魔女とは異なり、ペルシネットには塔の中でも海辺の小屋でも、何不自由ない場所を提供します。

怒りのあまりペルシネットを海辺の小屋に置き去りにしますが、こうした場所を提供することが、結末の伏線となり、王子との仲、子供が出来たことに対しても可愛さ余って憎さ百倍、でもその怒りの中にも妖精自体が気が付いてないペルシネットへの愛がわずかに残っていたことを感じさせます。

ペルシネットと王子が死を決意した時、わずかに残っていた愛に火が付き、再びペルシネットへの愛がよみがえり、二人を許して自ら彼らを王子の王国へと導いた、という流れになりますね。

この「フランスのおとぎ話『ペルシネット』(Persinette:1698年)」は、グリム童話とは少し異なり、若い男女が最初はその若さゆえに戸惑い、その後苦難を味わい成長し、その果てに幸せを勝ち取る、という物語だと思います。

過激な内容が含まれているかというと、まぁそう取られる内容もあるかな、ぐらいな感じですが、グリム童話にも引き継がれた「主人公が塔に閉じ込められたのが12歳」という設定が受け継がれ、グリム童話でもこの童話でも書かれた時代(17世紀や19世紀)からすると、子供が生まれるのは過激な描写だった、ということも考えられそう。

(なのでこれを原作としたグリム童話では子供向けのお話を意識して、そのあたりをぼかしたのでしょう)

更なる原作「ペトロシネッラ」ではどうか

グリム童話のラプンツェルは、その約100年前のフランスのおとぎ話「ペルシネット」を原作。そのペルシネットは更にその約50年前の「ペトロシネッラ」(1634年イタリア人作家のジャンバティスタ・バジーレによるもの)を原作としています。

この「ペトロシネッラ」の大枠の流れは大体同じですが、細かなところでやはり結構違いますね。

  • 物語は「パスカドッツィア」(Pascadozzia)という一人の女性から始まる
  • 家の隣には鬼女(Orgress)の家があり、その庭にある美しいパセリが食べたくなったが、鬼女に見つかり、危険を逃れるために子を産んだら鬼女に渡すと約束する
  • やがて女の子が生まれ、その時胸にパセリの小枝を身に着けていたことから「ペトロシネッラ(Petrosinella)」(パセリの意味)と名付け、7歳になると学校に通わせた
    (「ペトロシネッラ」(Petrosinella)はイタリア語の「prezzemolo」(パセリ)から派生した名前のようだ)
  • 子供はよく鬼女に出会い、鬼女は子供に「お母さんに約束を守るように言いなさい」と告げる
  • 子供からその話を何度も聞くので、うんざりしたパスカドッツィアは、今度その鬼女に会ったら「持って行け!」と言うように子供に告げる
  • 無邪気な子供は鬼女に会った時にその通りに言ってしまい、鬼女は子供(ペトロシネッラ)を森へと連れ去る
  • ペトロシネッラは小さな窓があるだけの塔に閉じ込められ、鬼女はペトロシネッラの長い髪で塔の上と下を上り下りする
  • ある時王子が塔にいる美しいペトロシネッラを見つける
  • 二人はやがて親密になり二人で街へと逃げ出すが、鬼女もこれに気付き追いかける!
  • ペトロシネッラがガルナッツ(木のコブ)を投げつけると恐ろしい犬に変り鬼女に吠え掛かるが、鬼女はポケットからパンを出すと犬はおとなしくなる(笑)
  • ペトロシネッラが再び木のコブを投げつけると、今度は恐ろしいライオンに、3つ目の木のコブを投げつけると恐ろしい狼へと変わり、見事二人は鬼女から逃げ切り、王子の王国に到着。
  • 王子はペトロシネッラを妻として迎え、幸せに暮らしましたとさ

参考)
Petrosinella – An Italian Rapunzel Tale:pookpress.co.uk

何が怖いかな?

グリム童話の原作の原作となるこのバジーレの「ペトロシネッラ」。

夫婦ではなく一人の女性から物語が始まり、子供が生まれたら渡すように約束をしつつも、その約束を守らないし、子供が学校で行く途中で鬼女に会うことも気にしない(笑)

鬼女は鬼女で、無理やり子供をさらうのではなく、子供に会うたびに「母親に約束を守るように伝えろ!」と、母親が自ら約束を守るようにと促す律義さを持ってます。

子供(ペトロシネッラ)は長い髪を持つのは同じですが、王子と逃亡計画を立て実際に二人で街に逃げ出すんですね。

(ペトロシネッラが小屋や砂漠に追放されたりしないし、王子が盲目の身になるなどはない)

最後、二人は鬼女を振り切り無事王子の王国へと逃げ込んだ。

こうしてみると、この原作とも言える原作から、鬼女が激しい感情を持つも優しい愛情を持つ妖精へと物語は変わり、そしてグリム童話で恐ろしい魔女へと変わって、王子とラプンツェルの苦難の物語となったようです。

この一番の大元となる物語では、怖いとか刺激的な要素があまりない感じ。

しいていれば、最後王子と逃げる時に出て来る恐ろしい犬やライオンなどの描写ぐらい。

ここまでみると、この物語を原作とした(グリム童話の原作でもある)フランスのおとぎ話『ペルシネット』が妊娠・出産もあり、王子が失明するシーンもあり、一番過激に見えそうです。(でも妖精は過激でも優しかったりするんですけどね)

ディズニーではどうなった?

グリム童話の「ラプンツェル」は、
ディズニーでは2010年「塔の上のラプンツェル」(Tangled)としてアニメ映画になりました。(その後、実写映画にもなってますね)

魔法の力を宿した長い金髪を持つ少女、ラプンツェルが主人公。

魔法の花で若さを保っていたマザー・ゴーテル。魔法の花の力がラプンツェルの髪に宿りますが、その髪を切ると魔法の力が失われると知ったゴーテルはラプンツェルを誘拐。

ラプンチェルを森の奥の塔に閉じ込め、魔法の力が宿る髪のおかげでゴーテルは若さを保ちます。

成長したラプンツェルは、毎年自分の誕生日に空に浮かぶ謎の光(王と王妃が彼女を探して放たれるランタン)に強く惹かれ、18歳の誕生日が近づく時には塔からの脱出を夢見ます。

そこへ王女の飾りを盗んだ盗賊フリンが塔に隠れ込み、ラプンツェルは、謎の光まで連れて行けば飾りはあげると約束する。

二人の冒険の旅がはじまり、その旅の中で、ラプンツェルとフリンはさまざまな困難に直面しつつも友情を深め、やがて深い愛情が芽生えます。

結末ではラプンチェルの髪が切られたことでゴーテルは消え去り、二人が結ばれて幸せになる、という物語。

現代風に、主人公のラプンツェルが逃げ出すハプニングは、ラプンツェルが18歳になる頃に起きる設定になってますね。

物語の変遷をまとめと

  • 1634年「ペトロシネッラ」(イタリア)、
  • 1698年「ペルシネット」(フランス)、
  • 1812年「ラプンツェル」(ドイツ:グリム童話)、
  • 2010年「塔の上のラプンツェル」(アメリカ:ディズニー)

大元はイタリアの作品で1人の女性と鬼女のお話。生まれた子供の名前はレタスにちなんだペトロシネッラ。王子と出会い鬼女から王子の王国へと逃げることに成功した二人の物語。

続いて、双子の子供が生まれるペルシネットの物語。妖精が可愛がりつつも激怒し、王子も失明してしまう。双子の子供が生まれ最後は王子も元に戻り妖精は二人の愛に感動して二人を許し王子の王国へと送り届けます。

そしてグリム童話では、ラプンツェルと名も変わり(意味的には同じ)、双子の子供の親は誰かが物語の中ではあまりわからず、悪い魔女が激怒してラプンツェルと王子は苦難の末に幸せになる物語。

ディズニーではディズニーらしく話もいろいろな要素が取り入れられ、最後は魔女(マザーゴーテル)は消え去り、ラプンツェルは盗賊と愛をはぐくみ最後は幸せになる成長と冒険の物語。

すべての物語に共通するのが、主人公が「レタスの意味を持つ名前」であり「物凄く長い金色の髪を持つ」ということ。

時代とともに、読者の対象や視聴者の対象によって、かなり話も変わりますが、怖いとか性描写など騒がれるほどのこともないのに、と思いつつ、こうして物語の変遷を原作から見てみるのも面白いですね。

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