誰もが知っている「ヘンゼルとグレーテル」。
グリム童話の1つですが、森で魔女と出会い、魔女を倒して最後には幸せに暮らす、という物語。
今回はこの物語に登場する魔女について、魔女の正体から魔女の名前、実は母親なのではという説や実はいい人説までまとめてみました。
まずは簡単にあらすじから見ていきましょう。
ヘンゼルとグレーテル:あらすじを簡単に(魔女中心)
この話に出てくる魔女は、
森の中においしそうなお菓子でできた家を建てて、子供たちをおびき寄せるのがすごく得意。
ある日、ヘンゼルとグレーテルという兄妹が、食べるものがなく苦しむ家から森に捨てられてしまいますが、魔女のお菓子の家を発見!つい食べ始めてしまいます。
でもそれは勿論魔女の罠。
二人をとらえるためのものだったんですね。
「ようこそ、子供たち」。
魔女はにっこり笑いますが、
魔女の目的は、兄妹を太らせて食べること。
毎日毎日、魔女はヘンゼルの指を触っては彼が太ったか確かめます。
「まだまだ足りないわ...」
グレーテルもまた、毎日厳しい労働を強いられます。
魔女はだんだんと我慢ができなくなり
「もう待てない!」とヘンゼルを食べることに決めました。でもここでグレーテルが大活躍。
魔女がかまどでパンを焼こうとしているところ、グレーテルが魔女をその中に押し込んでしまったんです。
「今しかない!」
ヘンゼルとグレーテルは逃げ出します。
魔女の家にあった財宝を手に入れ、無事に家に帰ります。
めでたし、めでたし。
参照記事:英語版Wikipedia、日本語版Wikipedia
ヘンゼルとグレーテル:魔女の正体は母親?
魔女の正体は、実はヘンゼルとグレーテルの母親、とか、母親の親戚(魔女の姪が母親)などの話があるようですが、原作にはそうしたことは出てきません。
この物語は、14世紀頃の中世ヨーロッパの伝承に起源を持つとされていて、この時代は飢饉や食糧不足が一般的であり、実際14世紀初頭(1315年–1317年)では「ヨーロッパの大飢饉」が起きたようです。
当時、食料をめぐる悲惨な争いが起きたことは容易に想像できることから、この物語での魔女の正体とは、こうした食糧事情による極端な行動や倫理の崩壊を象徴している存在、となるかもしれません。
また中世ヨーロッパでは魔女は社会から恐れられ排除される存在でもあったことから、異端の者としての象徴がこの物語の魔女の正体ということも言えそうです。
他にもヘンゼルとグレーテルでは魔女は森に棲んでますが、中世の人にとっては森は神秘的で未知の力が宿る場所として考えられていたことから、自然の力を操る存在としての象徴だった、ということも考えられそうですね。
魔女の正体は、実は母親というのはオリジナルの物語にはなく、その後に登場したいろいろなバージョンの中でそうした設定があるものもある、みたいな感じになりそうです。
ヘンゼルとグレーテル:魔女の名前
魔女に名前があるか調べてみると、グリム兄弟によるオリジナルの「ヘンゼルとグレーテル」では、魔女の名前は出てきません。単に「魔女」となってます。
(英語の the witch に相当するドイツ語「die Hexe」で表現され、特定の名前は付けられてない)
オリジナルの物語ではなく、
その後の例えばオペラや映画では魔女に名前が付けられてますね。
- 1892年のドイツの作曲家エンゲルベルト・フンパーディンクによるオペラ:
「ロジーナ・レッカーマウル」(Rosina Leckermaul) - 2013年の映画「ヘンゼル & グレーテル: ウィッチ・ハンターズ」:
「ムリエル」または「ミュリエル」(Muriel) - 2020年の映画「ヘンゼル & グレーテル」:
「ホルダ」(Holda)
ヘンゼルとグレーテル:魔女はいい人?
物語に登場する魔女は「実は良い人」だった、というお話があります。
オリジナルの物語を読むと、どこからどうみてもそうは見えませんが(笑)これは物語をどう解釈するか、というところになりますね。
物語に登場する魔女は、見ようによっては、
- 森をさまようヘンゼルとグレーテルに食べ物を与え保護した
- 二人に数々の試練を与えて成長を促した
といったような、母親のような存在であり、二人を成長させるメンターのような人、という解釈もできそうですね。
実際、2020年の映画「ヘンゼル & グレーテル」に登場する魔女(ホルダ)は、単なる悪役としての魔女ではなく、グレーテルに魔法や生き方について教えたり、成長と自己発見を促すといったような重要なキャラクタとして描かれてます。
こうした映画の影響や、物語の元となる伝承の時代背景を考えて、魔女は実は良い人なのでは?といろいろ想像を巡らせるのも楽しいですね。
まとめ
- 魔女の正体、母親説について:
原作では魔女の正体について具体的に描かれていませんが、この物語を元に作られたその後の作品ではいろいろな解釈が与えられてるようだ。その中に母親説や母親の親戚(魔女の姪が母親)などの話がある。(ただしこれらは原作にはない設定) - 魔女の名前:
グリム兄弟のオリジナルでは魔女の名前は出てこないが、後のオペラや映画では様々な名前が付けられている(例:ロジーナ・レッカーマウル、ムリエル、ホルダ)。 - 魔女はいい人?:
物語の解釈によっては魔女を良い人と見ることもできそう。魔女はヘンゼルとグレーテルに食べ物を与え、保護し、成長を促す、といった母親やメンターとしての役割を持っていると見ることもできる
「ヘンゼルとグレーテル」の物語は、見方によっては単なる子供向けのおとぎ話以上に深い意味を持ってるようですね。
特に、この物語に登場する魔女は実際には何を意味してるのかを想像するのは、いろいろな発見につながりそう。
こうしたことが、この物語が今でも愛され続けられている大きな理由にもなりそうですね。
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