【北風と太陽】あらすじと教訓を簡単に!帽子で北風が勝つ話の原作も詳しく

イソップ物語の1つ「北風と太陽」。

どちらが強いか、北風と太陽が旅人の服を脱がせる勝負をする物語ですが、あらすじはどうなっていたか、教訓は何か、簡単に見てみましょう。

また実は最初は旅人の帽子を飛ばす勝負を行い北風が勝つ、その後太陽が勝つ、といった勝負は2回戦で1勝1敗の引き分けに終わる、という話しもあるようですが、本当に元々は2回戦なのか、原作も詳しくまとめてみました。

北風と太陽のあらすじ

ある時、北風と太陽が「どちらが強いのか」、言い争いをしてました。

「北風である俺の方が強い!」
「いや、太陽のわしじゃ」

どちらも譲りませんが、
そこに丁度旅人が通りかかります。

「あの旅人のコートを脱がせた方が強い、ということにしよう!」

北風と太陽の話が落ち着き、まずは北風から

こんなの簡単さ。
得意の北風でコートを吹き飛ばしてしまえ!

北風は得意の冷たい風をビュービューと旅人に吹き付け、コードを脱がそうとしますが、これには旅人もびっくり。

うぉぉぉ、なんて寒いんだ。
コートをもっとしっかり着ないとな。

コートが吹き飛ぶどころか、
旅人はより一層コートを着込んでしまいます。

ハッハッハ。
では次はわしの番じゃな。

続いて太陽が得意の暖かい日差しを投げかけ、旅人を温めます。

「おぉ、なんて暖かなんだ。
これは良いけどちょっと熱くなってきたな」

そういうと旅人はコードを脱いでしまいました。

旅人がコートを脱いだぞ!
わしの方が強い、ということだな。

そう太陽は勝ち誇ります。

これには北風も「ぐぬぬぬぬ」となるしかありませんでした。

帽子の勝負のあらすじ

この「北風と太陽」の物語、
実は旅人のコートをどちらが脱がせるか、と言う前に、帽子をどちらが脱がせるかを最初に行う2回戦勝負だったという話しがありますね。

<あらすじは以下>

どちらが強いかという言い争う北風と太陽。

丁度通りかかった
旅人の帽子を脱がせた方が勝ち
という話しになり、まずは太陽が挑戦します。

太陽が得意の暖かい日差しを投げかけると
旅人も次第に暑くなり、

今日は暑いな。
帽子をしっかり被ってないと病気になってしまいそうだ

旅人は帽子を脱ぐどころか、更に深くかぶります。

「どれどれ、次はわしの番じゃな。」

北風が得意の強い風をと吹き付けると、
旅人の帽子が「ヒュ~」とどこかに飛んでしまいました。

ハッハッハ、見たか太陽さん。
わしの勝ちじゃな。

これには太陽も「ぐぬぬぬぬ」となるわけですが、太陽は2回戦目を提案します。

それが旅人のコートを脱がせること。

これが最初のあらすじに戻り、結果として北風と太陽は1勝1負の引き分けに終わりましたとさ。

帽子の勝負は原作にあるの?

この2つ目のあらすじにある「帽子の勝負」は「この物語にはこうした話があったんだ」と紹介されることがありますが、実は元々のイソップ物語にはないようです

この「北風と太陽」の大元の原作は、
古代ギリシャ(紀元前12世紀~9世紀とすごい昔)の「ボレアスとヘリオス」(北風の神と太陽の神)の話。

簡単なあらすじは以下となり、
今に伝わる話と基本同じになりますね。

北風の神(ボレアス:Boreas)と太陽の神(ヘリオス:Helios)が力の強さを争い、旅人の服を脱がせることができたら勝ちとした。

北風が先に激しく吹いた。旅人が服にしがみつき更に着込む。北風は疲れ果て、続いて太陽が穏やかに照らすと旅人が服を脱ぎ始める。さらに熱を上げると旅人は暑さに耐えられなくなり、脱を脱いで川に入って涼んだ。

参照)【ギリシャ語WIKI】Βορέας και Ήλιος

これが原作となり、その何世紀も後に
ラテン語版「風と太陽」となり、ドイツ語、フランス語、英語などへと翻訳されす。

19世紀(ビクトリア時代の中期)に「風」が「北風」へと変わりタイトルも今に伝わる「北風と太陽」になったようですね。

原作には「帽子を飛ばす勝負」「2回勝負をする」がないので、翻訳されていく過程で追加されたのか、ドイツ語版やフランス語版のWIKI、英語のネット検索や英語版のWIKIで確認したりしたところ、そうした内容はどこにもありません。

となると出元は一体どこかなのか。

更に調べてみると、
実は以前、WIKI日本語版の「北風と太陽」の中にその説明があったようです。

(灯台下暗しなのでした(笑))

WIKI日本語版では、
現在ではその解説は削除されてますが、
北風と太陽のWIKIの履歴をたどると、
以下のように一時期「帽子の勝負が1回目」の説明があったようです。

  • 2003年10月4日版:
    最初の説明が登場。ほぼ内容なし
  • 2005年4月27日版:
    北風と太陽のあらすじが追加された
    (でも帽子の話は出てこない)
  • 2008年4月19日版
    「この話には別の話もある」ということで、「最初は旅人の帽子をとる勝負をした」との解説が加わる
  • 2017年12月15日版
    「最初に帽子を取る勝負をした」という説明がごっそり削除された

(以降、現在に至る)

履歴を調べてみると2008年から2017年までの約10年間、「帽子の勝負が1回目」という説明があったことになりますね。

なぜ「帽子を取る勝負」が削除されたかと言えば、「この内容の出典が不明」であり、
2017年9月に調査が行われた結果「どこにも出典が確認されたなった」ことによるようです

(だからこの年、WIKIからその説明が削除された)

この調査では、日本国内で出版されたイソップの「北風と太陽」の物語について、1925年(大正14年)から2014年(平成26年)までの80冊を調査し(講談社、中央公論、集英社、筑摩書房、岩波書店、研究社などが含まれる)、結果どこにも「帽子の勝負」の記述がなかった、ということのようです。

※)2001年のビートたけし著「ビートたけしのウソップ物語」(瑞雲舎)も調査対象の1つになってたりします(笑)

この調査は日本国内の書籍を対象としているので、もしかしたら海外のどこかの地域のローカルバージョンにあるのかも、とも思い、それなら英語の情報で検索すれば(ネットでは英語で記載された情報が最も多いので)何かしら見つかってもおかしくないと思いますが、相当検索してチェックしてみても、これが全く出てこない

こうなってくると、

「日本で誰かが創作として付け加えた」
「ソースを確認せずWIKIに説明を加えてしまった」

ということになりそうですが、
少し視点を変えて西洋だけでなくアジア圏の情報も調べてみると、中国では「帽子を飛ばした」「2回勝負した」という内容が割と昔から伝わっているようです

The North Wind and the Sun | Learn Teochew
(北風と太陽|潮州語を学ぼう)

中国の方言の1つ「潮州語」で伝わっているようで、タイトルは「北風佮日頭」(北風と太陽)。

※)潮州語:広東省の東部や東南アジアに話者が多い。古漢語を多く含む。

【北風佮日頭のあらすじ】

  • 北風と太陽が、どちらが強いかで言い争っている
  • そこに旅人が通りかかり、旅人の帽子とマントをどちらが脱がせるかで勝負をつけることになった。
  • 北風と太陽が同時に旅人の帽子とマントを脱がせにかかる
  • 北風はビュー!と強い風を送り、それとともに空は雲に覆われ太陽の視界をさえぎってしまう
  • 北風の強い風で旅人の帽子が飛び、あわてて帽子を拾おうとした時にマントのボタンが外れ、マントも飛んでしまう。
  • 「どうだ!俺が勝ったな」と自慢げな北風
  • それに対し「雲で前が見えないぞ!これではお前が勝ったことが分からない!」と太陽が訴えている間に旅人は帽子をかぶりマントも着てしまう(笑)
  • 「おいおい、それでは俺が勝ったことが分からないだろ」と北風が再び強く吹くが、旅人は寒がり、今度は帽子もマントも放さない。
  • 北風が強く吹いたおかげで雲も流れ、太陽が出て来ると旅人は暖かくなり、帽子もマントも脱いだ
  • 「どうだ、北風。太陽のわしの方が強いというわけだな」
  • 「太陽め。覚えてろよ」
  • 旅人「今日は寒かったり暑かったりなんて日だ...」

旅人が太陽と北風のおかげで大変だったことをつぶやいたり、北風が負け惜しみをいったりして、面白いですね。

これは中国に伝わるお話となりますが、
中国語のWIKIによると、イソップ童話の最古の中国語訳は17世紀(ベルギーの宣教師キネコによる1625年の口述筆記)となるようです。

その後19世紀には外国人が中国語を学ぶための本として出版されたりしていることから、その頃から時を経る中で一部地域でこうした物語へ変化したのかもしれません。

もしかしたらこの内容が日本に伝わり、
更にそれが変化して「最初は帽子、次にマントの2回勝負」という形になって一部の地域で伝わっている、ということも考えられそうです。

(その地域の人が、たまたまWIKIの編集者となり、その内容が当たり前と思ってWIKIをある時編集した?)

ということは、
2回勝負のお話を知ってるのは日本人だけ?(笑)

参考)
中国語WIKI – 北風與太陽

北風と太陽の教訓

では最後にこの物語の教訓について。

フランス語版は「暴力より優しさ」で終わり、ドイツ語版では「優しさは暴力よりも優れている」、英語版では「説得は力よりも優れている」で終わるこの「北風と太陽」の物語。

北風が負け太陽が勝つことからの教訓

物語の教訓としては
(日本では)よく以下のように紹介されますね。

  • 物事は強引に進めてもうまくいかない。
    やさしく丁寧に/着実に進めることが重要だ
  • 人を動かすには冷たい態度、無理やりではダメ。
    暖かく接っすれば自ら動いてくれるものだ

でもこれらより、直接の教訓として感じるのは以下になるでしょうか。

  • 人を動かすには、強制ではなく、その人の意志をそちらに向けることが重要である

結局は同じことを言っているようにも見えますが、物事の達成に重点をおいて教訓を読み取るか、人を動かすことに重点を置いて教訓を読み取るかの違い。

何かをやろうと思った時、勿論一人で全てできれば良いですが、そうしたことも少なく、必ず誰かほかの人が絡むもの。

仕事ならなおさらですが、
「達成したい目的が、それに関わる人の目的にもなるように持っていくことが重要」という考え方。

仕事で言えば、たとえば上司が「これをやってくれ」とだけ部下に伝えれば、それは強制にもなり「面倒だな」「いやだな」となってうまく進まない場面も出て来ると思います。

でも「これをやると給料があがる」「スキルがあがる」と理由付け/動機付けをすることで、それを行うことがその部下自身の目的にもなり、自らが進んで動くようになる、ということにもなりますね。

仕事でなくても、たとえば妻が「ダイヤの指輪が欲しい!」と思って夫に「買ってよ!」とだけ伝えれば「お前、家計の事考えてるの?」と反発されることもあるでしょう。

でも「ダイヤの指輪が欲しい」という気持ちを時折出しつつ、「私、節約に頑張る!」「いつだってあなたのことを思って家事も頑張る!」など、けなげであったり一生懸命であったりするところを見せると、

「そういえば指輪が欲しいって言ってたな。いつも頑張ってくれてるんだ。結婚記念日に買ったらきっと喜んでくれるな!」

なんていう気持ちにもなって、
「ダイヤの指輪を買う」ことが二人の共通の目的/目標にもなりますよね。(旦那がそう思ってくれると私も嬉しい(笑))

子供が英語の勉強が大嫌い、という場合にも、「もっと勉強しなさい!」というだけでなく、

「〇〇ちゃんの事が好きなんでしょ?あの子、最近英語を勉強してるんだって。」

なんて話をすると、

「なにぃ~?!だったら英語を勉強すると話のきっかけが作りやすくなるかもしれない。英語が得意になると好きになってくれるかも。ウヒョー!」

なんて、親が言わなくても英語の勉強をバンバン自分からやるようになるかもしれませんよね。(笑)

人に何かをしてもらいたいと思ったら、強制的にやらせようとするのではなく、その人がそれに向けて自ら行動するにはどうするかをまず考えること。それが結果として物事も思った方向に自然に進むし良い結果が得られる、ということになるのでしょう。

2回戦で引き分けからの教訓

日本で独自に発展したと思われる
「帽子の勝負の話」。

日本らしく(?)一回目は北風が勝ち、2回目は太陽が勝つ、といった1勝1敗の引き分けで、どちらが優るということはない、という話しになりますが(小学校の徒競走で順位を付けないみたいな(笑))、この2回の勝負を含めて考えると、また違った教訓の側面が見えてきそうです。

1回戦が帽子を脱がす勝負、
2回戦がコートを脱がす勝負。

どちらも「強い北風」「暖かな光」と、
それぞれ使う力は同じでも結果は異なるというお話し。

  • 物事を解決するには、1つに固執するのではなく、都度適切なものを見極めることが大切
  • 1つの方法でうまくいかなければ別の手段も考えよう

1つに凝り固まらず、物事は多面的に見て柔軟に取り組むのが大切、ということが教訓になるでしょう。

まとめ

  • 北風と太陽の物語は、旅人のコートを脱がせる勝負をして、無理やり脱がせようとした北風が負け、暖かな日差しで自然に脱がせた太陽が勝利する、というお話し
  • この話には、旅人の帽子を脱がせる、といった1回戦があり、それには北風が勝った、という2番勝負の内容ものがある。
  • 2番勝負の内容は、どうやら日本にだけ知られ、元々は日本語のWIKIにその説明がされていた時期が10年ほどあったが、今は削除されている。
  • 教訓は、人は強制で動かすのではなく、自発的に動いてくれるようにすることが大切であること。2回戦の話では、物事の解決には1つに凝り固まらず多面的に考えることが大切であること。

イソップの北風と太陽のお話し、
日本独自の話も追加されたようですが、そうなるとお話から読み取れる教訓もまたガラッと変わりますね。

海外から来た人に「実は勝負は2回戦だったんだ。最初は帽子を...」なんてお話しすると「え?そうなの?!」なんて驚いて友達に話し、更にそれがそのまた友達へ...と、近い将来「実は2回戦だった!」なんて話の流れが世界標準になったりして。

そうなると、ソースはどこだ!なんて探す人も多くなりそうですね。

(ソースは日本のWIKIなんて、英語版のWIKIに書かれる日が来たりして 笑)。

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