日本昔話で親しまれる「桃太郎」のあらすじを簡単にまとめてます。
作者や原作、家来の秘密とともに見ていきましょう。
<主な登場人物>
- 桃太郎:物語の主人公。大きな桃の中から生まれた少年。
- おばあさん:川で洗濯をしているときに大きな桃を見つける。桃太郎を愛情深く育て、きび団子を桃太郎にさずける。
- 猿、犬、キジ:きび団子で桃太郎の仲間になって大活躍。
- 鬼:村人を困らせる悪者
桃太郎のあらすじを簡単に!
昔々ある所に、おじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんは山へしば狩りに、
おばあさんは川でお洗濯。
ある日、おばあさんが川で大きな桃が流れて来るのを発見!
これは凄い!と家に持ち帰えります。
おじいさん:
「おお、なんと見事な桃だ!」
おばあさん:
「まあ、中から子供が出てきたよ」
おじいさんと一緒に食べようとその桃を切ってみると、なんと中から元気な男の子が現れた!
二人はこの子を「桃太郎」と名付け、大切に育てました。
桃太郎が大きくなると、近くの島に住む鬼たちが村人を困らせていることを知り、鬼退治に行くと決意します。
桃太郎:
「鬼が村の人々を困らせている。僕が行って退治するんだ!」
桃太郎は、おばあさんが作ってくれた「日本一のきび団子」を持って、いざ鬼のいる場所へ出発!
旅の途中、桃太郎はイヌ、サル、キジと出会い、きび団子で彼らを仲間にしました。
桃太郎:
「このきび団子をあげるから、私と一緒に鬼退治に行こう!」
犬、猿、雉:
「ありがとう!私たちも力になるよ。頑張る!」
桃太郎と動物たちは鬼が住む島(鬼が島)に到着し、鬼たちと戦いました。桃太郎と仲間たちは勇敢に戦い、鬼たちを退治することに成功!やったね!
桃太郎:
「これで村の人々も安心だ!」
鬼たちは悪事を悔い改め、
盗んだ宝物を桃太郎に返しました。
桃太郎は村に帰り、宝物を村人と分け合いました。これには村人たちも大喜び!
村には平和が訪れ、皆幸せに暮らしましたとさ。おしまい。
作者や原作は?
大元は古事記?
桃太郎の物語は、日本で一番古いとされる歴史書「古事記」に描かれている桃が元になっている、という説がありますね。
その桃は、古事記に登場する最も古い夫婦の神の「イザナギ」(旦那さん)と「イザナミ」(奥さん)に関係します。
イザナミ(奥さん)が死んでしまい、イザナギ(旦那さん)が黄泉の国に奥さんに会いに行きますが、醜い姿になっていた奥さんは「私の姿を見ないでね」と告げます。
そう言われても見たくなってしまうのが人情(いや、イザナギは神様なんですけどね)というもので、イザナギ(旦那さん)は妻の姿を見てしまいます。
でも変わり果てたその姿に驚いて逃げ出し、これには奥さんも大激怒。逃げるイザナギに鬼が追いかけ、イザナギは桃を投げつけ鬼を撃退したというお話し。
このお話に出て来る「桃」が桃太郎の中に出て来る桃の元となる説。
つまり「桃は邪気を払うもの」であり、そうしたものが「鬼を倒す」という原型が古事記に描かれていて、そこから時代が経過し「桃に関係する男子が鬼を倒す」という形の物語として語り継がれていった、ということになるでしょう。
神の国の桃が元になったことから、
人間界には空から降ってくるより川を流れて来る、というのが自然かな?みたいな発想になったんでしょうね。
ちなみに日本昔話で有名な「因幡の白兎」のお話は古事記の中に書かれてますが桃太郎の話は出てきません。
古事記の中に出て来るのは、
先ほど見た「桃を投げつけて鬼を撃退した」というお話しだけ。
桃太郎のモデルはこの人?
古事記には桃太郎の話がなくても、
「この人が桃太郎のモデルになったのでは?」という方は古事記に登場します。
それが「吉備津彦命」(きびつひこのみこと)。
紀元前3世紀ごろの人物で、第7代 孝霊天皇の第三皇子。
このお方、勇猛果敢で「温羅退治伝説」といった話が残ってます。
<温羅退治伝説について>
温羅(うら / おんら)とは、古代の鬼のこと。
つまり「温羅退治伝説」とは「鬼退治の伝説」ともなりますね。
- 古代において、異国から吉備にやってきた鬼は、製鉄技術を吉備地域へもたらし、鬼ノ城を拠点として一帯を支配した
- 鬼に支配された人々は苦しみ、その窮状を都に訴えた
- 大和の王は「吉備津彦命」に鬼退治するよう命じた
- 「吉備津彦命」は吉備の中山に陣を構え、鬼も城から弓矢で迎え撃つ
- 激しい戦いの末、鬼はキジに化け逃走。「吉備津彦命」は鷹に返信して追撃。鬼はさらに鯉に化けて逃走。吉備津彦命は鵜に変身して追撃し退治した。
このお話の中には、
桃太郎のお話の中に出て来るキジや犬も出てきます。(猿は出てこない)
桃太郎のお話に出て来る「猿」「犬」「キジ」は、この「温羅退治伝説」に登場する忠実な家臣が3人がモデルとされてるようですね。
- 犬のモデル:忠実な家臣「犬飼健命」(いぬかいたけるのみこと)
- 猿のモデル:智将「楽々森彦命」(ささもりひこのみこと)
- 雉(キジ)のモデル:鳥飼に優れた家臣「留玉臣命」(とめたまおみのみこと)
この「温羅退治伝説」が専門家の間で桃太郎の原作とされているわけではなく、そう考えられてる説がある、ところです。
桃や桃太郎も出てきませんしね。
最も古い桃太郎は?
桃太郎のお話は伝承で伝わってきたことから「原作はこれ!」と確定されてないようですね。
では最も古く「桃太郎の物語」として記録に残っているものは?と見ると、まず上で見た「温羅退治伝説」が今見る形となったのが室町時代の末期、16世紀後半ごろ。
「桃太郎」の名がつけられた物語としては、
江戸時代(1723年:享保8年)に出版された『もゝ太郎』という本が現存する最古の1つのようです。
この本、子供の手にも収まるほどの小ささ(縦5.1cm×横3.5cm!)や赤い見かけから「赤小本」と呼ばれる子供向けに出された本。
当時の子供も、着物の中にちょいと入れられるサイズ、という感じになりそうです。
この天理図書館に保管されている『もゝ太郎』は「九や九左衛門」という方が出した本のようですが(この方が作者になるのかな?)、その内容は今知られる桃太郎の出自(登場の仕方)とは異なります。
- 昔々、ある所におじいさんとおばあさんがいた
- おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に
(このあたり、今とおんなじですね!) - 桃が川に流れてきてお婆さんが持って帰った
(絵に見るように桃は特に大きくない) - 拾った桃を食べると、おじいさん、おばあさんは若返り、子供をもうけた。それが桃太郎。
(桃太郎は二人の実の息子だった!) - 桃太郎はすぐに成長し、猿、キジ、犬をお供に鬼ヶ島へ。
- 鬼から宝ものを得た!
というような、サクサク読める感じになってるようです。
この内容にみられるように、当時、桃太郎は「桃から生まれた」のではなく、
- おじいさん、おばあさんが桃の力で若返り、
- そして二人の子として生まれた
という内容になってます。
桃には不老長寿伝説もあり、
それが「二人の若返り」として話に反映されたとも言えそうです。
桃太郎、2つの流れ
上で見た江戸時代の『もゝ太郎』のように、「おじいさん、おばあさんが若返り、その子供として生まれる」という内容と、今広く知られる「桃から生まれる」という、大きく2つの桃太郎があります。
- 「おじいさん、おばあさんが若返る」のは「回春型」と呼ばれる
(春が回ってくる、ということで若返り) - 「桃から桃太郎が生まれる」のは「果生型」と呼ばれる
(果物の「果」から「生」まれる、ということで果生型)
「桃から生まれた桃太郎」(果生型)は、1887年(明治20年)に小学校の本(尋常小学読本)に採用されたり、桃太郎の執筆に大きくかかわった作家(巖谷小波)が1894年(明治27年)に「日本昔話」として「桃から生まれた桃太郎」をまとめたことから、一般的に知られるようになったのだとか。
つまり、
- 明治以降から今にかけて「桃太郎は桃から生まれた」(果生型)
- それ以前、江戸時代などでは「おじいさん、おばあさんが桃で若返り、二人の子として生まれた」(回春型)
こうした内容が主流だったようですね。
また、今見る典型的な桃太郎は、
「日の丸のハチマキ」、
「陣羽織」、
「手に持つ幟(のぼり)」、
というイメージになってますが、
こうした姿も時代背景もあって明治時代からのようです。
こうした今知る桃太郎は、
起源である古事記から歴史の流れを考えると、物凄く最近にそのイメージが確立したことになるんですね。
家来の意味や役割について
最後に、桃太郎の家来、「犬」「猿」「キジ」について。
そもそも家来はなぜ動物なの?
上の方で見たように、
物語の受け継がれてきた歴史も長いことから、元々は桃太郎の家来は「人」だったのでは?なんて想像もできそうです。
上の方でみた「温羅退治伝説」(鬼退治の伝説)では人対鬼のお話し。
元々人と鬼のお話だったとして、なぜ桃太郎の家来は動物になったのか不思議に思ったりしますが、江戸時代では子供向けの小さな本でも出版されていたことからも想像できるように、長い歴史の中でいつの頃からか桃太郎は子供向けのお話として伝わるようになったのでしょう。
そうした時、
「家来に人の名前が出て来ると、覚えるのも絵を描くのも面倒だな。動物にしちゃえ!」と思ったりした、かどうかは分かりませんが、桃太郎の鬼退治をより際立たされるために、家来は動物に変ったのかもしれません。
ただこれは次に調べてみた、
なぜ家来は「犬」「猿」「キジ」なのか、の不思議にも関連する内容になりそうですね。
なぜ「犬」「猿」「キジ」なの?
家来が動物になったとしても、それがなぜ「犬」「猿」「キジ」なのか。
これにはちゃんと理由があったようで、
十二支(干支(えと))のそれぞれの方角が関係しているようですね。
(あくまでこれも説の1つにすぎないようですが)
鬼ヶ島のある方角を「鬼門」(悪い方向:北東)とした場合、その逆の良い方向は「裏鬼門」(南西)とされ、その良い方向は十二支の方角で言えば「申」(さる)「酉」(とり)「戌」(いぬ)。
桃太郎の物語では「酉」(とり)は「キジ」になってますが、鳥の中でも強そうなものが選ばれた、ということになりそうです。
こうした十二支の方角を使って物語のキャラを考え、それがそのまま、猿、犬、キジとして描かれるようになった、とも考えられそうですね。
家来の役割や意味は?
桃太郎は、犬、猿、キジの順で家来にしていくわけですが、それぞれの役割や意味は以下とする説が広く知られているようです。
- 犬は「仁」:犬は主人に対する忠誠や愛情、恩を忘れないことから「仁」。
- 猿は「智」:猿は知恵があり「智」。
- キジ「勇」:キジは山火事が迫って来ても卵を守り巣から離れない、と言われる「勇」。
この「仁」「智」「智」は「三徳」と言われ、儒教の始祖「孔子」が大切にしたもの。
江戸時代、儒教の影響は大きく、儒学は国教とも言えるもので、その教えや考え方は武家社会だけでなく商業道徳や教育の基本として広く庶民にも知れ渡っていたようです。
こうしたことを考えると、桃太郎の物語が形作られる中、儒教の考え方が影響したことは大いに考えられそうです。
家来の数、そしてその役割を考えた場合、家来の数があまり多くなると話がややこしくなる、それなら、ということで、儒教の開祖が大切にしている「三徳」を当てはめれば家来は3人で分かりやすい、という考え方だったかもしれませんね。
ただ、先ほど見たように、江戸時代に伝わる桃太郎の話は、子供向けで非常にあっさりした単純な内容。そのなかに「三徳」がイメージされるような話になっているとはちょっと考えづらい。
今知る桃太郎のお話は、明治以降、教科書に載ったり昔話としてまとめられたりして、その後さらに脚色や詳しい装飾がされたものとも言えそうです。
そうだとすると「家来の意味や役割は儒教の三徳に基づくもの」という、もっともらしい考え方自体、現代の「詳しい桃太郎の物語」から見た、少々こじつけで無理やり意味を当てはめている、ということが言えるのかもしれません。
おまけ:太宰治と芥川龍之介の桃太郎
桃太郎の物語について、
このお話を題材にして小説を書いた文豪たちは多いですね。
正岡子規、北原白秋、菊池寛、尾崎紅葉、そして芥川龍之介。
そう下中で「走れメロス」や「人間失格」などの太宰治も、実は桃太郎を題材に小説を書こうとしたらしいですね。
でも書かなかった。
その理由は、
- 桃太郎は日本一の旗を持つ男。
- 自分は日本一どころか日本二にも三にもなってない。
- そんな日本一の男を自分が書けるわけがない
ということだったようですね。
芥川龍之介の桃太郎は、働くことが嫌いな桃太郎や、仲の悪い家来たち、実は平和に暮らしていた鬼たちなど、今知る桃太郎とはずいぶん内容がことなりますが、どんな物語か興味がある場合には以下から見てみてください。
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