【かちかち山】あらすじを簡単に!おばあさんを食べる怖い話

「カチカチ山」は、仲の良い老夫婦と仲良しのウサギ、意地悪く欲深いタヌキの物語。

物語には、おばあさんが殺され、それを知らずに食べてしまうお爺さん、といったショッキングな内容が含まれ、日本の昔話の中でもダントツに残虐なお話にも見えます。

このカチカチ山のあらすじを簡単に見て、
なぜその話が今に伝わるのか、その意味は何かまでまとめてみました。

カチカチ山:あらすじ

物語は仲良い老夫婦と悪さをするタヌキから始まります。

畑を荒らすタヌキ

ある所に貧しいながらも仲の良いお爺さんとお婆さんがいました。

畑仕事をしながら暮らしてたところ、意地悪なタヌキが畑を荒らしてしまいます。

困ったお爺さんは罠の仕掛けて、ついにタヌキをとらえることに成功し、柱にしばり、

「タヌキ汁を作っておいてくれ」

と、お婆さんにに告げ畑仕事へと出かけます。

お婆さんを騙すタヌキ

これはまずい!、と、
なんとか逃れようとするタヌキ。

「おばあさん、もう悪いことはしないよ。
お手伝いするからこの縄をほどいてくれ!」

そう泣きながら言うタヌキを可哀想に思ったお婆さんは、タヌキの縄をほどきますが、なんとタヌキは畑道具でお婆さんを殴り殺してしまいます。

「こんなことをしやがって。
あの爺さんにも仕返ししないと気が済まない。そうだ、いいことを思いついたぞ」

タヌキはお婆さんを煮込んで鍋料理を作ったかと思えば、お婆さんに化けて帰ってきたお爺さんを騙します、

騙されるお爺さん

「タヌキ汁ができてるよ。疲れただろ。さぁ、お食べ」

何も知らないお爺さん、
タヌキはその鍋料理をお爺さんに食べさせます。

「そうかそうか、おいしそうだ。ではいただくか」

お爺さんが食べ終わるのを見計らい、タヌキは正体を明かします。

「馬鹿め!おれはタヌキだよ。
お前は婆さんを食ったのさ。そこを見てみるがいい」

これに驚いたお爺さん。
タヌキが言うところを見ると、そこにはお婆さんの骨が転がってます。

「な、なんてことを...」

悲しみ怒り狂うおじいさん、
タヌキを捕まえようとしますが、タヌキはあざけり笑いながら山に帰っていきました。

お爺さんとウサギ

そこに訪ねてきたお爺さんの友達のウサギさん。

「お爺さん、どうしたの?!」

「タヌキが...お婆さんが...」

お爺さんがウサギに事情を話すと
お婆さんとも仲良しだったウサギは大激怒。

「なんてひどいことを。
よし、僕が敵を討ってやる!」

かちかち山とかちかち鳥

そういうとウサギは山に出かけ、タヌキを見つけます。

「タヌキさん、丁度よいところに来た。
お金をあげるからこの柴(しば)を運ぶの手伝ってよ」

「これを運べばお金をくれるって?そんなのお安い御用だ」

そういうとタヌキは一杯の柴を背に担ぎ、
うさぎと一緒に山を下りていきますが、
ウサギはタヌキの後ろ周り、タヌキが背負った柴に火打石で火をつけます。

かちかち、かちかち

「おい、ウサギさん。かちかち音がするけど何だい?」

「ここはカチカチ山さ。カチカチ鳥が鳴いてるのさ」

「なんだ、そうか」

タヌキの背の柴は火が付きぼうぼうと燃え出します。

「おい、ウサギさん。何がぼうぼう音がしてるけど何だい?」

「あれはぼうぼう鳥が鳴いてるのさ。」

「なんだ、そうか」

トウガラシ入りの薬

次第に火の勢いが強くなり、
タヌキは背中を大やけど。

「あちちちち...痛い、痛いよ...」

これを見たウサギはトウガラシの入った味噌を(塗り薬として)渡します。

「タヌキさん、大変だ。この薬を塗ると良いよ!」

そんなものをぬったタヌキさん、
当然痛みは倍増して更に苦しみます。

「タヌキさん、怪我を直すには体力を付けなくっちゃね。魚を取りに行こうよ!」

確かに、と思ったタヌキはウサギと海へ魚を取りに向かいます。

欲深いタヌキの結末

ウサギは「木の小舟」と「泥で作った大きな舟」を用意して、

「タヌキさん、この舟で魚を取りに行こう。どちらの舟でも好きな方に乗りなよ」

大きな舟の方が魚が沢山乗せられると思った欲深いタヌキは泥の舟を選びます。

「さぁ、いっぱい魚をとるぞ!」

いさんで出かけるウサギとタヌキ。

「お魚いっぱい!トントントン」。

ウサギが櫂(かい:オールのこと)で舟を叩きながら歌を歌います。

タヌキも真似して歌を歌い舟を叩きますが、
ただでさえ泥で作られた舟、どんどん崩れ出してしまいます。

「おいおい、どうなってるんだ。舟が崩れるぅ!沈んじゃうよ!」

とうとう舟は沈み、タヌキは溺れてしまいます。

「ウサギさん、助けておくれよ!おいら、泳げないんだ!」

そんなタヌキを見ながらウサギはタヌキにこう告げます。

「お前がやったことを思い出せ!お婆さんのかたき討ちだ!」

ウサギは舟の櫂でタヌキを叩き、タヌキはそのまま溺れ死んでしまいました。

ウサギは見事お爺さんお婆さんの無念を晴らしたのでした。

子供向けにはマイルドな話へ

お婆さんが殺され、さらに騙されたお爺さんがそれを食べる、など、あまりに衝撃的なストーリーということから、酷いと思われる描写は子供でも普通に読めるような形になってる場合も多いようですね。

  • タヌキがお婆さんを殺してしまう
    ⇒ タヌキがお婆さんに怪我をさせる
  • おじいさんが騙されておばあさんで作られた料理を食べてしまう
    ⇒おばあさんが怪我だけをしたことにして、このシーン自体カット。(または描写をすごく簡潔にして、タヌキ汁の代わりに婆汁を作った、と素早く説明)
  • タヌキがおぼれ死ぬ
    ⇒ タヌキはなんとか逃れる。または逃れた後、もう悪さはしないと誓う。
  • ウサギがかたき討ちをして終わる
    ⇒ 最後は、おじいさん、おばあさん、ウサギは仲良く暮らした、という形で終わる

このように、タヌキが悪さをして、それを懲らしめる、最後はハッピーエンド、としているものも多いようです。

衝撃のストーリーが今に伝わるわけは?

このかちかち山、本当にこんな話だったのか?と、大人になって読み返し驚いた、というか、言い表しがたい恐ろしさを抱くのは私だけではないと思います。

「ジョジョの奇妙な冒険」という漫画/アニメの第1シーズンでは、吸血鬼にするぞ、とDIOに言われた母親が、この子だけは助けてくれ、とその腕に抱く赤ん坊の命乞いをし、それを受け入れたDIOは母親を吸血鬼にする、でも、吸血鬼と化した母親が自分の赤ちゃんを食べてしまう結果となるシーンがありますが、カチカチ山では、騙されたお爺さんが、知らなかったとはいえ、仲の良かった妻であるお婆さんの肉で作られた鍋料理を食べてしまう、といった、それよりも格段に酷い、という感じです。

調べてみると、このかちかち山の物語は、室町時代には成立したようですね。

参考)かちかち山 wiki

WIKIの説明によれば、人を殺め料理してしまうタヌキは最後には罰せられることから、カニバリズム(食人)に対する極めて強い憎悪を想起させる、数ある日本の昔話の中でも異色といってよい、と説明されてます。

ただそれ以上の説明は特になく、室町時代に成立したこの残酷であり嫌悪するようなシーンが今に伝わり、どうしてこの物語がそのシーンを含めて生き延びているのかを考えると、やはりそうした出来事が身近に起こり得る状況が続いていた、自然と受け入れられていた、ということも考えられそうです。

この話が成立した室町時代では、その末期、歴史でも習う有名な「応仁の乱」(1467-1477)が起き、その争いは全国に波及し約10年も続く中、戦国時代へと移っていきます。

権力争い、武力争いが頻繁に起き、またそれが継続したこの時代、当然のように庶民の食糧事情にも影響したと考えられますし、天候による飢饉も起きたことでしょう。

そうした中で、かちかち山のお爺さんのように、そんなつもりはないのに食べてしまった、という状況が、当時の人々の身近な話題として感じられるものであったのかもしれません。

戦国時代に続く江戸時代、
この時代は世界的にも稀にみる安定した社会を築き上げますが、その中でも多く知られるだけで、

「享保の大飢饉」(1732年 – 1733年)、
「天明の大飢饉」(1782年 – 1788年)、
「寛政の大飢饉」(1789年 – 1801年)

など、大規模な飢饉も発生してますね。

やむにやまれず人減らしも当然のようにあったと思われるこの時代、そうした飢饉があれば尚更で、実際に人が人を食べてしまうことまで至らなかったにしても、そうした状況に追い込まれる場合も普通に考えれらた、とも想像できそう。

だからこのかちかち山の物語が、そうした状況でも人としての道を見失うな、という、強烈なシーンとともに教訓としてそのまま語り継がれてきたなど、考えられそうです。

まとめ

  • カチカチ山はお爺さんがタヌキに騙され、とんでもないことをさせられるシーンが含まれる。
  • 子供向けには省略されたり緩和された表現を使った物語にしていることもある
  • この残虐なシーンが今に伝わるのは、室町時代から江戸時代などを通し、そうした状況が身近に起こり得る環境にあり、そうしたことをしないようにと強く戒めるためにそのまま現代にも伝わった、ということが考えられそう

昔話は物語として単純に楽しむ、というのも良いですが、1歩深く読むと、その物語の成立した人々の状況なども想像できそうです。

そうした時代もあった、そんな時代に生まれたらどうしたであろう、など考えて読むのも、なかなか興味深いところですね。

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