灰をまき、花咲け!花咲け!と枯れ木に花を咲かせる「花咲か爺さん」の物語。
「ここ掘れワンワン」や「枯れ木に花を咲かせましょう」のセリフが有名で、これだけを覚えている人も多いと思います。
今回は「花咲か爺さん」の簡単なあらすじ、
原作とも言われる「雁取り爺」との違いと考察、物語の真相は何か、までまとめてみました。
関連)
【花咲か爺さん】犬の名前はシロ?ポチ?犬種は柴犬かも調べてみた
花咲か爺さん:あらすじ
ではまずあらすじから、ざっと見ていきましょう!
白い子犬との出会い
昔々ある所に、優しいおじいさん、おばあさんが仲良く暮らしていました。
おじいさんは、ある時、からだが弱っている白い子犬を見つけますが、可愛そうにと家に持ち帰り育てることにします。
子犬が白かったことから「シロ」と名付け、
おじいさん、おばあさんはまるで我が子のように大切に育てます。
シロもすっかり元気になり、
おじいさんと一緒に畑仕事にでかけるようになりました。
ここ掘れワンワン
おじいさんが畑仕事をしていたある日、
シロがお爺さんのズボンのすそを引っ張り、地面を掘りだすんですね。
ここ掘れ、ワンワン!
まるでここを掘れと言わんばかりに吠えるシロ。
シロ、どうした?
ここに何か埋まってるのか?
お爺さんも執拗に吠えるシロが気になり、
そこを掘り返してみると、なんと大判小判がザクザクと出て来るではありませんか。
「シロ、でかしたぞ!」
おじいさんは大急ぎで家に帰り、
このことをおばあさんと大いに喜びました。
悪いお爺さんの怒り
心の優しいおじいさんとおばあさんは、
これは独り占めするものではないと、近所の人にも配ったんですね。
皆ありがたがりますが、
これを羨ましく思ったのが、隣の意地悪なお爺さんとお婆さん。
おい、じいさん。
その犬わしにも貸してくれ!
「いや、それは...」
断る優しいおじいさんですが、
意地悪なお爺さんは強引にシロを連れていきます。
自分の畑にも財宝が眠っているに違いない。
意地悪なお爺さんは
シロを自分の畑に連れていきますが、
シロが同じように吠えたところを掘ってみると、なんと出て来るのはゴミやガラクタばかり。
なんだ、この犬は!
出て来るのはゴミばかりじゃないか!
この役立たず!と怒った意地悪なお爺さんは、
怒りのあまりシロを畑道具で殴って死なせてしまいます。
スクスクと伸びる木
「おぉ、シロよ...」
優しいおじいさん、おばあさんはシロの変わり果てた姿に悲しみますが、もうシロは戻ってきません。
可哀想に。ごめんよ、シロ。
でもここで安らかにお眠り...
二人はシロを家の庭にお墓を作り、
そこに木の枝を立てて丁寧に弔うのでした。
するとどうでしょう。
植えた枝は日に日にドンドンと伸び、すぐに大きな木になりました。
「これはどうしたことか...」
驚く優しいおじいさん、おばあさんですが、シロが夢に出て来るんですね。
大好きなおじいさん、おばあさん、
悲しまないで。
大きくなった木で臼(うす)を作って、
僕の大好きだったお餅をついてくださいな。
おじいさん、おばあさんは夢から覚めると、
シロが言ったように、木を切り倒し、臼を作ります。
「シロが大好きだった餅をつくるぞ!」
ぺったんこ、ぺったんこ、と、二人で餅をつきはじめると、なんと金銀財宝が湧き出てくるではありませんか。
「なんと、シロはまたも私たちを助けてくれるんだ...」
優しいおじいさん、おばあさんは、シロがいつまでも二人を見守ってくれていることに涙し、以前と同じように近所の人にも分け与えます。
その臼をよこせ!
これを見た隣の意地悪なお爺さんとお婆さん、
その臼を貸せ!
と、また強引に持っていく。
意地悪なおじいさんが同じようにその臼で餅をつくと、金銀財宝どころか、ゴミばかりが湧いて出てきます。
「このクソ臼が!」
怒りのあまり、
意地悪なお爺さんはその臼を燃やしてしまいます。
「私たちのシロがまた...」
悔やんでもシロはもう戻ってきません。
優しいお爺さん、おばあさんは
泣く泣く焼かれて残った灰を持ち帰ると、再びシロが夢に出てきます。
泣かないで。
僕は大丈夫だよ。
持ってきた灰を庭にまいておくれ。
花咲け!花咲け!
悲しみに暮れるおじいさん、おばあさん。
でもシロがそう言うならと、
大事な灰をザルにため、小脇に抱えるや、
一振り、また一振りと、灰を庭にまくと、これがどうしたことでしょう。
それまで枯れていた桜の木がなんと満開の花をつけ出します。
びっくりしたおじいさん、
花咲け、花咲け、シロの花咲け!
シロと一緒に過ごした日々が桜の花のように生き生きと甦るような素晴らしい光景に、おじいさんも嬉しくなり、他の枯れ木も花を咲かせようと外に飛び出していきます。
枯れ木よ、花をつけろ!
花咲け、花咲け、シロの花咲け!
そう言いながら灰をまくと、
枯れ木は次々に花をつけ、
もう辺りは花が満開。それは見事な景色へとかわります。
お殿様とおじいさん
ちょうどそこへ通りがかったお城のお殿様。
「これはなんと見事なものだ...」
優しいおじいさんが灰をまくごとに、次々の花をつける枯れ木たち。お殿様はその不思議な光景に大層魅入られ、優しいお爺さんに沢山の褒美を与えます。
「またシロが助けてくれたんだ。ありがとう、ありがとうな、シロよ...」
これを見てまた恨めしく思った隣の意地悪なお爺さん。
その灰をよこせ!
優しいおじいさんから強引に奪い取り、
同じように「花咲け、花咲け!」と灰をまきます。
でも花は一向に咲かないどころか、
風に舞いお殿様やその毛以来たちの目に入り大変な騒ぎになりました。
そこのじじい、何をする!
この無礼者め!
意地悪なお爺さんは殿様の機嫌を大いにそこね、それだけならまだしも捕らえられて厳しい罰を受けるのでした。
優しいおじいさんとおばあさんは、シロはいつまでも一緒にいてくれる、と、シロを偲びながらも何不自由なく幸せに暮らしましたとさ。
花咲か爺さんの原作は?
この「花咲か爺さん」は口承で伝わる物語。
地域によっていろいろなバリエーションがあるようですが、民俗学者の「柳田國男」(1875-1962:明治8年 – 昭和37年)は、「雁取り爺」がその元になるとの指摘をしたとかしないとか。
この「雁取り爺」の物語も昔から伝わる民話の1つで、地方によってその内容は結構変わったりするようですが、ネット上で確認できるものの1つに山形県に伝わる以下がありますね。
実際内容を見ると非常に「花咲か爺さん」と非常に似ていますが、簡単にあらすじを見てみましょう。
出だしは「桃太郎」の話とミックスされてる感じで始まります。
- 昔々、優しい爺さま婆さまが暮らしてた。
- 爺さまは山へ柴刈りに、婆さまは川へお洗濯に。
- 川上から箱が流れてきて、その中には白い犬がいて、こりゃ可愛いとその犬を飼うことに。
- 爺さんがその犬を山に連れて行くと、土をガサガサ掘り出し、宝物がザクザク出てきた
- 隣の爺さんがその犬を強引に借りていき、山で穴を掘らせるとフンやらゴミやらが出て来て、怒った爺さん、犬を殺してしまいます。
- 優しい爺さま婆さまは犬を埋めてやり松の木を一本植えておくと、その木がドンドン大きくなる
- 爺さまは木を切り木臼(きうす)を作って、それでコメのモミをひいてみると、コメの代わりに宝物が一杯出てきた
- 隣の爺さん、これを見て木臼を強引に借りていく。同じことをしてみると、フンだのゴミだのが一杯出て来る
- 怒った爺さん、木臼を叩っきり燃やしてしまい、優しい爺さまは悲しみ灰を持ち帰る。
- 帰り道、空に鴈(がん:鳥)が飛んでたので灰をまくと鳥の目に入りバッタバタと落ちてきて大漁!
- 爺さまは婆さまと鶏料理でお腹いっぱいに
- 悪い爺さんも同じことをすると、灰が自分の目に入り、目が見えなくなったとさ
原作との違いと考察
この「雁取り爺」では、話の筋は「花咲か爺さん」と基本同じですが、桃太郎の桃のように川で小箱が流れて来てそこに子犬がいた、という子犬の登場の仕方がまず異なります。
桃太郎の桃は(古事記を元にした神の世界にある)桃の木から実が1つ落ち流れてきたものが元になっているようですが、それと同じように子犬は神の国からの贈り物、という位置づけのようにも見えますね。
参考)
【桃太郎】あらすじを簡単に!作者や原作,家来の秘密について
犬には特に名前がなく、犬と出会った後の流れは「花咲か爺さん」と大体同じですが、「雁取り爺」での最後は、悪いおじいさんの目に灰が入り報いを受けて終わり、というのが一番の違い。
最後にお爺さんが「鴈」を大量にとって幸せになる、ということから「雁取り爺」というタイトルになってるようですが、同じような民話はいろいろな地方で伝わり、その代表格が今に伝わる「花咲か爺さん」。
WIKIのこの物語「雁取り爺」の説明を見ると、「花咲か爺さん」では最後は「枯れ木に花を咲かせる」といった華やかさがあり、それが江戸時代の草双紙(大衆向けの娯楽本)での継承につながり話が固定化された、という説明がされてます。
確かに、今の時代のように映像があるわけでもない時代、ちょっとしたイラストと文字の組み合わせ(つまり絵本みたいなもの)でのみ楽しんでいた当時の人たちは、映像を当たり前のように見る現代の人々に比べて、文字から頭の中でリアルに想像する力がかなり高かった(文字からの想像力が高い)とも考えられそうで、そうした中で「枯れ木に花を咲かせる」というくだりは、現代の人が想像する以上に当時の人々の頭の中に非常にリアルで鮮やかなビジュアルを与えていたのかもしれません。
そう考えると、良いお爺さんお婆さんが最後には幸せになり、悪いお爺さんが報いを受ける、という割と単純な流れより、「枯れ木に花を咲かせる」というビジュアル的にも美しい場面は多くの人に支持され有名になった、だからその話が主流となり残った、とも言えそうです。
もう1つ言えそうなのが、「雁取り爺」では悪い爺さんが罰を受けるといった因果応報の結末。
「花咲か爺さん」も悪い爺さんが最後は殿様を怒らせ報いを受ける、という因果応報の結末ですが、「枯れ木に花を咲かせる」という要素が、「失うものもあるが、そこからの希望もまたあるものだ」ということを、鮮やかなビジュアルとともに打ち出しているようにも見えますよね。
単純な因果応報だけでなく、その先に希望も添えられているようにも見えるのが「花咲か爺さん」であり、鮮やかなビジュアルと希望により、同類の民話の中で一番有名な話として残ってきたのでしょう。
花咲か爺さんの真相は?
「花咲か爺さん」は、優しいお爺さんとお婆さんが、見つけた子犬と共に幸せを見つける物語。
特に印象的な最後の「枯れ木から花が咲く」というシーンからは、物語の最後を華やかに彩るだけでなく「喪失と再生」も感じられます。
あらすじにも加えてしまいましたが、このシーンでは「既に枯れてしまったものからの新たな再生」「愛するものの記憶があらなた形で生き続けること」を象徴しているようにも見え、お爺さんさんは単に花が咲くのが楽しかったのではなく、この時亡くなった犬を思い出し、まるでその場に一緒にいるかのような感覚に包まれて、涙を流しながら「花咲け、花咲け」と叫んでいたのでは?とも思えます。
子犬はお爺さん、お婆さんにとっては大切な我が子との位置づけであり、幼子を失った親の深い悲しみ、失われた存在との再会を夢見る気持ちを反映しているようにも見えるんですね。
こうしたことを考えて、改めて物語を見てみると、
- 子犬と出会うのは子供の誕生を、
- 「ここ掘れワンワン」といって財宝が出て来るのは、子供との楽しい日々を、
- 犬が亡くなり木が成長し、その木から作った臼から財宝が出て来るのは、愛する子供を失った後も新たな成長や幸せがあることを、
- 灰により枯れ木に花が咲くのは、愛する我が子がたとえ肉体をなくしても、その魂は永遠であり、いつまでも親のことを見守っていることを、
「花咲か爺さん」は、こうした「喪失と再生」、「子を失った親の悲しみと希望」の物語でもあり、元々は「雁取り爺」のような因果応報の物語が、ある時に子を失った親がそこに装飾を加え、最後の鴈を大量にとる箇所を「枯れ木に花を咲かせる」という変え語り継いだ、ということも考えられそうですね。
まとめ
- 「花咲か爺さん」は、優しいお爺さんお婆さんの、我が子同然の子犬を通しての喜びと悲しみ、希望の物語。
- 原作は「鴈取り爺」で、因果応報の物語となっている
- 「花咲か爺さん」が同類の物語の中では定着し受け告げられてきたのは、特に最後の「枯れ木から花を咲かせる」シーンがビジュアル時にも華やかであり希望にも見え、記憶に残りやすい形であったことが考えられる
- 「枯れ木から花を咲かせる」シーンを深読みすれば、「花咲か爺さん」は、我が子を失った親の悲しみと希望の物語とも読み取れる
花咲け!花咲け!と灰をまく花咲か爺さん。
子供が大人へと成長する割合も現代に比べれば格段に低かったと考えられる時代を通し、この物語は人々の深層心理に根ざし語り継がれてきたのかも知れませんね。
関連)
【花咲か爺さん】犬の名前はシロ?ポチ?犬種は柴犬かも調べてみた
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