小さな一寸法師が、冒険をして鬼退治!
この一寸法師のあらすじを簡単にご紹介。
また原作となる本当の話や、一寸法師の色々な生まれ方もまとめました。
<主な登場人物>
- 一寸法師:とても小さく、でも勇敢で賢い。さまざまな困難を乗り越えていく。
- 夫婦:一寸法師の親。子どもが欲しいと願っていたところ一寸法師を授かる。
- 偉い人:位の高い侍、または役人。京の都ではこの人の元で働く。
- 偉い人の娘:偉い人の娘。一寸法師の未来の花嫁。
- 鬼:お姫様をさらおうとする悪者。一寸法師が立ち向かう敵役。
一寸法師のあらすじ
一寸法師が誕生!
昔々あるところに、仲の良い夫婦がいました。
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でもその夫婦には子供がなく、
ある時、神様にお願いに行ったんですね。
「どうか子供をさずけてくださいまし。
指ほどの小さな子供でもかまいませんから」
すると本当に子供を授かり、
小さな指ほど(一寸ほど)の大きさの赤ちゃんが生まれたんです。
「本当に指ほどの子供を授かったよ!
ハッハッハッ」
夫婦は笑いながらも愛情たっぷりその子を大切に育て「一寸法師」と名付けます。
一寸法師は、身体が小さくても心は大きく、優しく元気な、とても良い子でした。
京の都へ武者修行
ある日、一寸法師は、お父さんお母さんにこう言います。
「京の都に行って武者修行をしたい!
偉くなって、おっとう、おっかあに恩返しするんだ!」
お父さん、お母さんは、
「よく言った!さすが私たちの子だ。」
「それなら行っておいで。応援するよ!」
そこで一寸法師は、
針を刀に、
麦わらを刀の鞘にして腰に差し、
おわんの船で、おはしを船をこぐ「かい」にして、
いざ、京都へ!と旅立ちます。
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おわんの船で川を上り、
京都についた一寸法師は
「偉い人の家来になって出世するぞ!」
と、大きく立派な家を選び、
位の高いお侍さまに頼みます。
「お侍さま。私は一寸法師。京の都に武者修行に参りました。どうかこの屋敷で私を使ってください」
ちょこんとお辞儀して頼む一寸法師。
想像してみてください。
小さな可愛らしい姿をした子供が、丁寧にお辞儀をして頼む姿を。
それを見たお侍も、笑いながら
「おもしろい小僧だな。よし使ってやろう!」
一寸法師は、そのお屋敷で働くことになり、
読み書きや武芸にも励みました。
(がんばれ、一寸法師!)
お姫様と鬼退治
ある日その家のお姫さまが、
清水寺へとお参りに行くことになりました。
その頃、京の都では
「鬼が出て人をさらっていく」
という噂がもちきりだったんです。
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一寸法師も、お姫様の身を案じ、
他の家来とともに一緒にお供をすることにしました。
お寺に行く道中のこと。
「キャー!」という悲鳴が聞こえたかと思えば、大きな恐ろしい鬼が向かってくるではないですか。
家来のお侍が次々と鬼に向かう、
でも鬼はそんなお侍を弾き飛ばし、お姫様に一直線に向かってきます。
「姫はもらった!食ってやる!」
そこで飛び出した一寸法師。
一寸法師:
「我は一寸法師。お前などに姫を渡すものか!」
鬼:
「ハッハッハ。なんだこの豆粒みたいな小僧は。お前など一飲みだ!」
なんと一寸法師、
鬼に食われてしまいました。
それでも一寸法師は負けません。
鬼のお腹の中を走り回り、
腰につけた針の刀で、お腹の中をこれでもかと突きまくる。
鬼:「痛たたた、痛たたた」
あまりの痛さに鬼は地面を転げまわります。
一寸法師:「どうだ、参ったか!」
鬼はたまらず一寸法師を吐き出したかと思えば、目に涙を浮かべ一目散に逃げ去りました。
鬼は二度と京の都に現れなくなったんです。
(やったぜ!一寸法師)
大きくなった一寸法師
鬼が去った後を見渡せば、
鬼の宝物「打ち出の小槌(こづち)」が落ちてるではありませんか。
お姫様:
「この打ち出の小槌(こづち)、願うものを何でも打ち出すんですよ」
一寸法師
「お姫様、その小槌で、どうか私の背を伸ばしてください!」
お姫様:
「はい。一寸法師よ、大きくなーれ、大きくなーれ...」
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お姫さまが打ち出の小槌を振るたびに、
一寸法師の背がどんどん伸びて、立派な青年の姿になりました。
小さくても勇敢に守ってくれた一寸法師。
お姫さまも一寸法師が大好きで、二人は夫婦になりました。
二人は一寸法師のお父さん、お母さんを都に呼び寄せ、皆一緒に幸せに暮らしましたとさ。
一寸法師の本当の話は?
この一寸法師の物語、
小さな一寸法師が数々の冒険、試練を乗り越えて、最後はお姫様と結婚し、幸せに暮らす、といった、一人の子供の成長を描いた物語になってます。
どの昔ばなしにも共通しますが、
親から子へ、更に孫へと語り継がれ、話しの大筋は変わらなくても、その中でいろいろなバージョンが生まれます。
今に伝わる一寸法師の物語は、
元をたどれば、鎌倉時代から江戸時代にかけてまとめられた「御伽草子」(おとぎぞうし)という、文章と絵で構成された、今で言えば絵本のようなもので、その中にある物語。
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今に伝わる一寸法師の原作という位置づけになりますが、一寸法師の境遇や京の都へ上った理由、お姫様と結婚した経緯など、今知る物語とはかなり内容が違うし、少し怖い物語となってます。
今知る一寸法師との違いが分かるよう、
あらすじ風にその内容を見ていきましょう。
御伽草子と一寸法師の違い
追い出される一寸法師
一寸法師の両親は、
摂津の国の難波の里にいました。
物語の中では、おじいさん、おばあさん、として描かれ、母親が40歳の時、子供が出来ないことを悲しみ、住吉大社にお参りして、子が授かるようにお願いをします。
大明神も深く同情し、
そして授かったのが小さな男の子。
背の方さが一寸しかなかったので「一寸法師」と名付けられますが、12歳、13歳になってもその背の高さは変わりません。
おじいさん、おばあさんは、それを気味が悪いと思い、
「これは化け物だ。どんな罪でこのような子を授かったのだろう」
などと嘆きます。
「どこかに追い出したいものだ」
二人がそんな話をしているところを聞いてしまい、「自分はここにいてはダメなんだ」と、一寸法師は家を出ることを決意します。
針を刀に、麦わらを刀の柄と鞘(さや)にし、お椀の船にのってお箸で漕いでいく。目指すはやはり京の都。
京の都でとんでもないことを
京の都についた一寸法師。
京の「三条」の「宰相殿」(位の高い人)の屋敷に立ち寄ります。
小さな一寸法師を見た宰相殿は「これは面白いやつ」ということで、一寸法師はそのお屋敷で暮らすことになりました。
(まずは良かった!)
そのお屋敷には13歳になる姫君がいて、
一寸法師はその美しさに一目ぼれ。
なんとか自分の嫁にしたいと思い、
ある時、寝ている姫君の口元に米粒を付け、「私が集めていたお米を姫が食べてしまった!」と嘘を言ってしまいます。
寝ている姫の口元に米粒が付いているのを見た宰相殿、一寸法師の話を信じ「こんな娘など都に置いてはおけぬ。殺してしまえ」と一寸法師に命じます。
一寸法師はお姫様に、
「宰相殿からは、あなたが盗みを働いた、後は私に任せる、と言われました」
と告げ、心の中は、この上なく幸せになり、お屋敷の外に連れ出します。
え?なになに?とあっけにとられるお姫様。
可哀想ですが、父親の宰相殿は「殺してしまえ」と言った手前、引き留めることもできません。
鬼の住む島に流される
二人はお屋敷を出て京の都も離れ、
一寸法師の故郷「難波」へと船で向かいますが、風邪が吹き荒れ、不思議な島に流れ着きます。
そして現れた2匹の鬼たち。
「あの小僧は一飲みだ。女は連れて行くぞ!」
鬼に一飲まれた一寸法師ですが、
鬼の目から出て来る。鬼が目をふさぐと今度は口から出て来る。
素早く飛び回る一寸法師に恐れをなした鬼たちは、
「これはただものではない。逃げるぞ!」
といったかと思えば、
手に「持つ打ち出の小槌」を放り投げ逃げ出します。
一寸法師はその打ち出の小槌を手に取り、「大きくなれ、大きくなれ」というと、背も伸び、美味しい食べ物、金銀など宝物も出し、都に戻ることに。
一寸法師、昇進!
京の五条に宿を取りしばらく滞在した所、
若くて立派な男と薄くしい姫様がいるという噂が広がり、それが帝の耳にも入ります。
帝は二人を呼び出し、一寸法師を見ると
「これほど美しい子だ。卑しい出の者ではないはず」と一寸法師に先祖を聞きます。
一寸法師が言うには、
父親は、堀河の中納言という人の子供で、だまされ田舎に流れたもの。そこで自分は育ったことや、母は伏見の少将の娘、ということで、それを聞いた帝は一寸法師を少将に任命されました。
一寸法師は「堀河の少将」と名乗り、お姫様と結婚し、両親も都に呼びよせ大事にお世話されました。
その後一寸法師は中納言へと昇進し、姫様との間に3人の子供も生まれ、末永く幸せにくらしましたとさ。
物語のポイント
現代に伝わる一寸法師と、この御伽草子の話しは大きく違い、
一寸法師は両親から化け物かもと恐れられ、見放されて京に旅立ちます。
また、出会ったお姫様を自分のお嫁さんにしたいと、お姫様の父親をだまし、あっけにとられるお姫様をお屋敷の外に連れ出すことに成功。
ここまでだけを見ると、
一寸法師は悲しい境遇にあり策略家でもある、
という面が強く表れてるようです。
その後は、持ち前の素早さ、勇敢さで鬼を退治し、打ち出の小槌で立派な青年の姿となりますが、金銀財宝までしっかりゲット、というしっかり者の面も描かれてます。
その後、帝に出自(どんな家柄の子か)を問われた時に、父親は「堀河の中納言の息子」であり、母親は「伏見の少将の娘」であると告げますが、これは物語の中でここしか出てこないようなので、一寸法師が機転を利かせてそう話したのか本当の話だったのかは分かりません。
策略家の面を見せる一寸法師、
ということから、
もしかしたら嘘だったかも、という感じも出てそうですよね。
ただ仮にそうだとしても、不遇な環境を跳ね返し、生き抜くために(嘘というより)知恵を働かせ、その知恵と勇気で困難を乗り越え、最後は幸せを手にした、と見ることもできます。
自分を見放した両親も呼び寄せ恩を返す、という心の優しさも描かれてますし、見放した親でも一寸法師は両親のことを愛していた、どんな親でも子は見捨ててはいけない、みたいなメッセージにも見えそうです。
原作から現代につなぐ一寸法師
御伽草子の一寸法師は、
一寸法師のつらい境遇や、見方によれば悪知恵を働かせる、といった面が出ていますが、この面がマイルドになり、今知る一寸法師に近い形で定着したのは明治時代。
明治29年(1896年)に発表された「巖谷小波」著作による「日本昔噺」に、この「原作をマイルドにした一寸法師」が収められ、大正末期まで読み継がれたようですね。
著者「巖谷小波」のお名前から「小波型」と呼ばれるようですが、このお話を元に、今知られるお話になってるようです。
ちなみに広く知られる「一寸法師の歌」は以下になりますが、これも「巖谷小波」の作詞です。
ユビニ タリナイ
イッスン ボウシ、
チイサイ カラダニ
オオキナ ノゾミ、
オワンノ フネニ
ハシノ カイ、
キョウヘ、ハルバル
ノボリ ユク
指に足りない
一寸法師
小さい身体に
大きな望み
お椀の船に
箸の櫂
京へはるばる
上りゆく
この歌詞は5番まであり、
5番目では、鬼が忘れた打ち出の小槌で、一寸法師は立派な大男になった、となります。
一寸法師の生まれ方
今に伝わる一寸法師の物語も、原作とされる御伽草子の一寸法師も、どちらも一寸法師は人の子として生まれます。
この一寸法師は、小さな人の物語であり、
御伽草子以前にも小さな人伝説はいろいろな地方にあったようですね。
御伽草子の一寸法師が良く知られるようになると、そうした地方の小さな人伝説も一寸法師と呼ばれるようになり、一寸法師の物語とミックスされれた、ということは容易に想像できそうです。
地方には一寸法師に似た話が伝わってますが、
子供の生まれ方を見てみると、結構色々ありますね。
- 「すねこたんぱこ」(岩手県)
観音様から子供を授かり、子供はおばあさんの脛(すね)から生まれる。 - 「あくと太郎」(青森県)
山姥(やまんば:鬼女)に嫁が食べられてしまい、残った踵(かかと)から生まれる。 - 「親指太郎」「五分次郎」(または五分太郎)
おばあさんの親指が膨らみ、親指から生まれる
これの他にも、一寸法師は「膝(ひざ)から生まれた」とするバージョンや、カタツムリやカエルといった小動物として生まれる、なんて話もあるようです。
ちなみにカエルが立派な若者になる、
というのお話は、グリム童話の「カエルの大さま」にありますね。
まとめ
- 一寸法師は、小さな子供の冒険と成長の物語
- 原作は御伽草子の物語で、そこには不遇な環境から知恵(時には悪知恵)と勇気で生き抜く一寸法師が描かれている
- 原作から現代の形となった元は、明治時代に出版された「巖谷小波」著作による「日本昔噺」
- 一寸法師は、人の子として生まれるが、中には親指、脛(すね)、た踵(かかと)、膝(ひざ)から生まれる、というバージョンもある
小さな体の一寸法師。
現代で言えば、田舎に住む少年が都会を目指し、そこで様々な出会いがあり、また苦難を乗り越え成功する、みたいなものになりますね。
昔の物語は現代だとどういったストーリーになるのか想像してみると、より面白くなりますね!
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